国会よりBlog

5月16日 本会議(代表質問)議事録(児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑)

○議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。阿部知子君。

 

〔阿部知子君登壇〕

 

○阿部知子君 民進党の阿部知子です。

ただいま議題となりました児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案について、民進党を代表して質問いたします。(拍手)

冒頭、この間の国会運営には大きな瑕疵があることを指摘したいと思います。

民進党として、五月九日、政治家同士の真摯な討論を妨げる法務委員長の解任決議案を提出、数において否決はされましたが、今後とも、立法府のあり方について常に問題提起を続けてまいります。

さて、過日、千葉県松戸市において、登校途中に暴行殺害、遺棄されたベトナム国籍の少女、レェ・ティ・ニャット・リンさんと御家族に、改めて心よりお悔やみを申し上げます。そして、五月五日の容疑者の再逮捕を機に、一日も早く真実が解明されることを祈ります。

また、リンさんの祖国ベトナムに対しても、このいたいけな少女を守ることができなかった日本社会の非力について深くおわびを申し上げるとともに、事件の全貌解明、厳重な処罰と再発防止に全力を注ぐ決意をお伝えすべきと思いますが、岸田外務大臣はどのような行動をとられたでしょうか。

民進党は、こうした悲劇を一日も早く終わらせるために、法務省から提出された性犯罪に係る刑法の一部を改正する法律案の早期成立を強く求めております。

そもそも国会の提出順序でいえば、刑法改正案が共謀罪に先行しておりました。今回の改正案は、性暴力の被害の当事者の方々が苦しみの中から声を上げ、あるいはみずからがその事実を言い立てることすらできない幼い被害者、さらには暴行の果てに殺害されていった犠牲者など、無言の被害者に寄り添い、手弁当で支援に当たってこられた関係者の方々の長年の努力の結実です。

明治時代から百十年ぶりの改正へとつながった今回の刑法改正案は、立法背景も法案の構成要件もろくろく説明できない共謀罪法案とは全く質が異なるのです。繰り返しますが、早期に成立が必要なのは、共謀罪ではなくて刑法改正案です。

刑法改正案では監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪が新設されます。

平成二十七年度における児童相談所の児童虐待相談数十万三千二百八十六件のうち性的虐待は千五百二十一件、また、市町村における虐待相談九万三千四百五十八件のうち千七十七件で、おのおの全体数の一・五%から一・二%とされておりますが、それらは氷山の一角であり、まだまだ潜在する事案は山ほどあるはずです。

本改正案が成立すれば、本人や保護者からの申告や暴行脅迫要件を満たさなくても、保護者、監護者による性的虐待に対して刑事罰を問うことができます。

実の父親に性的虐待を受けた当事者として、現在、刑法改正を訴える山本潤さんが、書籍「十三歳、「私」をなくした私」を上梓し、その本の中では、家庭という閉ざされた世界で繰り返される性暴力は、私の認知をとてもゆがませてしまった、被害を受けることで自分は価値がない人間だとも思った、大事にしてもらえる人間だと思えなくなる、人間とかかわり合いながら生きていくための感覚が壊されるということと、性的虐待がどれほど人間の奥深くに影響を及ぼすかが描かれております。まさに魂の殺人とも言われるゆえんです。

今も、どこかで、声を出せずにいる幼い被害者、強姦の果てに殺されていく被害者がいます。それらを許さないためにも、一刻も早い刑法改正案の成立を重ねて求めます。

また、そうした性暴力被害者支援として、緊急の医療的ケアも含めたワンストップ支援センター設置を強力に推進するための法案も昨年の暮れに五野党で共同提案いたしております。あわせて、この法案につきましても御審議いただくことを強くお願いを申し上げます。

以下、本題である児童福祉法並びに児童虐待防止法の改正案について質問いたします。

先ほど申し述べましたように、平成二十七年度における児童相談所の児童虐待相談対応件数は十万三千二百八十六件と、児童虐待防止法成立以前の平成十一年度から約九倍弱まで増加しております。

平成二十六年度の厚生労働省が把握した虐待による子供の死亡事案は七十一例。一年間に七十一名もの子供が心中をも含む虐待によって命を落としています。

虐待から子供たちを守ること、子供を虐待する親をつくり出さないこと、これらは社会全体の課題です。一刻の猶予もない喫緊の課題です。

本改正案では、昨年の児童福祉法改正で検討規定になっていた要保護児童のより適切な保護措置のために、裁判所の関与が強化されることになります。すなわち、親の同意が得られず二カ月以上経過した一時保護を行う場合に、従来であれば各県に置かれた児童福祉審議会の意見を聞くという仕組みから、家庭裁判所の承認という司法関与に変更をされます。

子供の権利擁護を第一とする児童福祉審議会にかわって裁判所が関与するには、家庭裁判所が児童虐待に関する専門性を十分に持っていることが不可欠となります。例えば、身体的外傷といった目に見える証拠がない場合に、その加害性を認識、把握できるだけの専門性、さらに、不安や不信によって閉ざされがちな子供の心をキャッチできる技量も要求されます。

現在、家庭裁判所において、児童虐待についての専門的な知見を有する調査官はどの程度いるのでしょうか。また、その専門性を養成するためにどのような研修が行われているのでしょうか。さらに、子供の心に寄り添い支援するための専門職や、民間団体も含めた取り組みとの連携はどう考えておられるのか、金田法務大臣にお聞きいたします。

また、現在でも難しい保護者教育や親子の再統合は、家裁の判断が介入することによってさらに困難となることも十分考えられますが、厚生労働省としては、家庭支援の継続性はどう担保するのでしょうか。今回の改正が親子を引き離すお墨つきに終わっては、司法介入はかえってマイナスになります。厚生労働大臣にお尋ねをいたします。

報道によりますと、四月二十三日に、離婚した父親のもとに一人だけで行った初めての面会交流の日に、四歳の女の子を巻き添えに父親が心中を図るという非常に痛ましい事件が起きました。親の動機のいかんにかかわらず、子供の命を奪うこと、これ以上の虐待はありません。

今回の事件でも明らかなように、個々の親子の心のうちまで見抜くことには限界があり、面会交流を一律に義務化することは慎重であらねばならないと考えます。優先すべきは、親の気持ちではなく、子供の命であり、子供の心です。果たして、離婚時に面会交流を条件とした家裁の判断にこうした視点はあったのか、法務大臣に伺います。

また、面会交流の義務化は一律な義務化ではなく、まず、子供の状態への十分な支援と配慮が必要と考えますが、厚生労働大臣のお考えを伺います。

平成十六年十月の児童虐待防止法の改正により、配偶者間の暴力を子供に見せること、いわゆる面前DVが心理的虐待に含まれることが明確化されました。面前DVは、子供に直接暴力行為はありません。しかし、子供の目の前で片方の親がもう一方の親に暴力を振るう、その光景を見るだけで、子供にとっては心理的虐待に当たります。これが厚生労働省の見解です。

ところが、裁判所では、面会交流の審判で、面前DVがあったことは確認できても、未成年者らへの直接の暴力があったことは確認できない、申立人との直接の面会をすることが未成年者らの福祉を害するとまでは言えないとの判断がなされることがあり、厚生労働省と裁判所との判断にずれが散見されます。

いま一度、政府に確認いたします。

面前DVは、児童への心理的虐待に当たり、一時保護の対象となること、また、面会交流を認めない事由に当たり得るという、今までの厚生労働省の立場に相違はありませんでしょうか。厚生労働大臣に確認をいたします。また、法務省側にも同様な認識があるかどうか、法務大臣に答弁を求めます。

そもそも、現在、児童相談所職員一人当たりの担当件数は平均何件でしょうか。政府は、児童相談所強化プランを決定し、児童福祉司、児童心理司、保健師の増員を計画しております。しかし、まだまだ足りません。

昨年の児童福祉法改正、本法案、この後、児童相談所の業務のあり方、要保護児童の通告のあり方、児童福祉業務の従事者の資質向上の方策を検討することとなっており、児童福祉法の改正が続きます。

虐待児童数の増加に制度と体制が追いつかず、虐待以外の業務、障害児支援、発達支援、家族再統合支援や特別養子縁組等に取り組めないのが児童相談所の実情でもあります。

今回の司法関与の強化によって、書類作成等の児童相談所の負担が過重となる結果、かえって児童相談所のケースワークがおろそかになることがないようにしなければなりません。二カ月という期間に必ずしも十分な親子とのコミュニケーションが図られないケースは多々あり、その後の長期にわたる親子との信頼関係を築くためにも、現場の裁量にも十分配慮した運用が必要と考えます。

まずは、今も虐待に苦しむ子供たちを救い出すこと、そのために児童相談所などの既存の体制を強化し、子供の命を守るために、そして親子支援チームなどの家庭への支援もさらに充実させるために、政府には十分な予算と人員を配置することを求めてまいります。この点、財務大臣、厚生労働大臣はどのようにお考えでしょうか。

最後に、児童虐待防止のために、社会全体の子供の育ちを見守る機能を強化する必要があります。育児を個々人の問題として扱う限り、核家族化した現代では、親が孤立し、育児の負担が重くのしかかります。育児には喜びもつらさもいっぱい詰まっています。保護者が子供を育て切ることができるような環境を整えることは社会の役割です。

ちなみに、人口四千人余りの神奈川県清川村では、児童虐待として児童相談所に寄せられる通報は一件もなく、むしろ、日常の保健師さんの巡回指導や近隣住民の支え合いが親子の孤立を未然に防ぎ、児童虐待を予防しているのではないかとも伺いました。

そうした観点から、社会のあらゆる場で、虐待の疑いがあれば、早期の通報、介入が当たり前となるよう、さきに民進党が提案した学校健診にかかわる歯科医師の役割が加えられた今回の改正を評価いたします。

かつて江戸から明治へと時代が変わるころ、日本を訪れた多くの外国人は、日本の各地で市井の人々の子供を大切に守る姿に出会い、また、日本の美しい自然に出会い、限りない称賛を与えたと言われております。

児童虐待は、個別の家庭の問題ではありません。社会全体の課題です。社会全体で子供を守る、そして育てる、保護者の負担と孤立を軽減し、親と子供が余裕を持って向き合い、暮らしていける社会を実現していくために、これからも民進党は全力を挙げて取り組んでまいります。

以上をもって、私の代表質問とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

 

〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

 

○国務大臣(塩崎恭久君) 阿部知子議員にお答えを申し上げます。

裁判所の関与を導入した場合の家庭支援の継続性についてのお尋ねがございました。

昨年の児童福祉法の改正により、子供が家庭において心身ともに健やかに養育されるよう、保護者を支援することが重要であることについて、法律上明記をいたしました。

今回の改正法案によりまして、児童相談所が行う保護者に対する指導に家庭裁判所の関与を導入することで指導の実効性が高まり、また、一時保護の手続に家庭裁判所の審査を導入することで、手続の適正化がより一層確保されるとともに、一時保護の長期化の抑制にもつながるものと考えております。

今回の改正事項も踏まえ、運用に当たっては、保護者指導や親子再統合に向けた支援が継続的に行われるよう、引き続き努めてまいります。

面会交流における子供への配慮等についてのお尋ねがございました。

面会交流は、離婚をした父母の協力のもとで、子供の利益の観点から適切に行われるべきものであり、DVや児童虐待の有無、子供の発達状況などさまざまな状況に応じた十分な配慮が必要であると認識をしております。

こうした認識のもと、面会交流が適切に行われるよう、引き続き、関係省庁とも連携しながら必要な支援を行ってまいります。

面前DVについてのお尋ねがございました。

子供の面前で配偶者に対する暴力が行われるいわゆる面前DVにつきましては、子供に著しい心理的外傷を与えるものであれば、児童虐待の防止等に関する法律第二条第四号に定める心理的虐待に該当し、子供の安全を迅速に確保し適切な保護を図る必要がある場合などには、一時保護の対象となります。

また、面会交流については、民法第七百六十六条に基づき、父母の協議で、また協議が調わないときなどは家庭裁判所が定めることとされております。

面前DVがあった場合に面会交流を実施するかどうかについては、子供の発達状況などさまざまな状況を踏まえ、子供の最善の利益の観点から適切に判断されることが重要であると考えております。

児童相談所の体制強化についてのお尋ねがございました。

児童相談所において、保護者への指導等を担う児童福祉司は、一人当たり平均約四十件の児童虐待相談事案を担当していると承知をしております。

児童相談所については、昨年の児童福祉法の改正により、児童心理司等の専門職の配置を新たに法律上に位置づけるとともに、職員に対する専門的な研修の受講を義務づけました。

さらに、昨年四月に策定をした児童相談所強化プランに基づき、児童福祉司などの専門職を平成三十一年度までの四年間で千百二十人増員することを目指すこととしております。

今後も、引き続き、児童相談所の体制や専門性を着実かつ計画的に強化してまいります。(拍手)

 

〔国務大臣金田勝年君登壇〕

 

○国務大臣(金田勝年君) 阿部知子議員にお答えを申し上げます。

まず、児童虐待についての専門的知見を有する家庭裁判所調査官の人数や、その専門性の養成のための研修、子供を支援するための専門職等との連携など、家庭裁判所の体制等についてお尋ねがありました。

全国の家庭裁判所には、心理学、社会学等の行動科学の専門的知見を有する家庭裁判所調査官が配置されており、その定員数は千五百九十六名と承知をいたしております。

家庭裁判所調査官については、任官するための研修や任官した後の研修におきまして、行動科学の最新の知識や、面接、心理テスト等の専門的技法を身につけるための研修が行われており、その中で、児童の虐待についても取り上げられているものと承知をいたしております。

御指摘の専門職等との間でも、必要に応じ、裁判所において連携が図られるものと承知をいたしております。

次に、面会交流に関する家庭裁判所の判断に、子供の命や子供の心を優先するという視点はあったのか、お尋ねがありました。

御指摘の事件の詳細は法務省としては把握をしておらず、個別の事件における家庭裁判所の判断に対して法務大臣としての見解を述べることは差し控えさせていただきます。

その上で、一般論として申し上げますと、民法上、面会交流の取り決めを行う場合には、子の利益を最も優先して考慮しなければならないものとされており、家庭裁判所においても、一般にそのような視点から適切な判断がされているものと承知をいたしております。

最後に、いわゆる面前DVが面会交流を認めない事由に当たり得るという認識を持っているか、お尋ねがありました。

離婚をする際に面会交流の取り決めを行うことは、一般に子の利益の観点から重要であると考えておりますが、一方の配偶者が子供の面前で他方の配偶者に対して暴力を加えることがあった場合など、子に対する心理的虐待があった場合には、面会交流をすることが子の利益に反するおそれがありますので、そのような場合には、面会交流をすることの当否を含め、慎重な対応が必要になるものと考えております。(拍手)

 

〔国務大臣岸田文雄君登壇〕

 

○国務大臣(岸田文雄君) 千葉県でのベトナム女児殺害事件についてお尋ねがありました。

御指摘の事件につきましては、私も大変心を痛めております。

私からは、四月十四日、訪日したベトナムのズン計画投資大臣に対し、また五月八日の日越外相会談においてミン副首相兼外相に対し、本件に日本国民は心を痛めていること、容疑者が逮捕され、捜査が進んでおり、早期の全容解明を進めていること等を述べつつ、心からのお悔やみをお伝えしました。

また、ベトナムでは、梅田駐ベトナム大使が、本事件の発生後、四月三日にリンさんの御実家を訪問し、御遺族に対し弔意を示し、また、容疑者逮捕後の四月十四日にも御遺族に対して御報告を行っております。(拍手)

 

〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

 

○国務大臣(麻生太郎君) 阿部議員から、児童相談所の体制強化について一問お尋ねがあっております。

児童虐待相談への対応件数は、近年増加を続けております。増加する児童虐待相談に的確に対応し、子供の安全確保を迅速に行うため、厚生労働省においては、昨年四月に児童相談所強化プランを策定し、児童福祉司等の専門職の配置の充実や資質の向上を図るなど、児童相談所の体制及び専門性を着実かつ計画的に強化していくこととしているものと承知をいたしております。

いずれにいたしましても、児童虐待への対応は重要と考えており、その支援のあり方につきましては、関係省庁からの予算の要求を踏まえ、各年度の予算編成過程で検討してまいりたいと考えております。(拍手)

 

○議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

2017/06/13 国会質疑   abetomoko