辻元清美さんと語る
 

~ 憲法9条を活かすために ~

 
辻元 清美(つじもと・きよみ)さん
1960年、奈良県生まれ。大阪府で育つ。早稲田大学在学中の1983年に民間国際交流団体ピースボートを設立し、世界各地で民間外交を展開。1996年、衆議議員選挙に社民党から立候補、比例代表近畿ブロックにて初当選。2000年、衆議院銀選挙大阪第10区から立候補し再選。議員活動では特定非営利活動促進法(NPO法)、情報公開法、児童売春・ポルノ禁止法などに取り組み成立させる。2002年、衆議院議員辞職。2004年、参議院議員選挙に大阪選挙区より無所属で出馬し次点。現在は、誰もが自由で平和に暮らせる社会を望む一個人として精力的に講演活動中。http://www.kiyomi.gr.jp/

 

 【対 談】新しい世界をめざし運動も政治も共生でいこう
 
国会で 「ソーリ、 ソーリ」 と小泉首相を追及した辻元清美さんは、 今、 憲法を活かす方法を提案して、 全国を行脚しています。 5月29日、 その辻元さんを阿部とも子の地元、 藤沢へお招きして 「憲法9条をとことん使う方法」 と銘打った講演、 阿部とも子との徹底対談をしてもらいました。 一回り大きくなって、 精力的に活動しているのを見ると、 あのとき、 辻元さんが 「失脚」 したのは、 次のステージのための歴史の必然だったのか、 とも思います。 それにしても、 清美ちゃん、 そろそろ、 政治の世界に戻ってきてよ。
 地域でともに助け合う活動が 平和の花を咲かす土壌
 
阿部 清美ちゃんに最初に聞きたいんだけれど、 小泉首相が 「自分がやりたいから」 といって郵政民営化や靖国神社参拝などを押し通している今の国会をどう見ていますか。 それから、 この間、 野にあって、 どんなことをしてきて、 何を発見したか教えてください。

辻元 小泉さんはあんなだけど、 私は、 希望はたくさんあちこちに転がってると思います。 永田町にいる議員の人たちいうたら、 2世、 3世の人たちが多いし、 それから、 大きな組織がバックについている人も多い。 だから、 考え方もごっつう狭いんですよ。

 一方で、 地域には頑張っているフツウの人たちが大勢いてはります。 先日、 名古屋や熊本へ講演に行ったら、 集まっていたのは会社の経営者の人たちばっかりなんですよ。 その人たちの多くは今までは自民党支持者やねん。 そやけども、 もうあかん、 このままでは子どもや孫たちにバトンタッチできへんで、 という危機感を持ってるんですね。 とくに小さな町ほど、 人が大勢来てくださることが多い。 そういう意味では、 何とか今の情勢を変えていかなあかんと思っている人は増えていると思います。

 それと、 この間感じているのは、 平和の花を咲かせようとしたら、 花を咲かすための土が必要だということです。 花を咲かす土は、 共生の社会。 10年前に比べたら今は、 地域で介護、 子育て、 環境などに関する市民の取り組みが増えていますが、 そういう 「ともに助け合おう」 という地域の活動に参加するということは、 ひいてはイラク戦争に反対することにつながっている。 共生という言葉は使ってなくても、 そういう助け合いの活動が全国に増えていることに希望を見出して、 もう一度、 へこたれんでやろかいなと思ったんです。

 私、 秘書給与の問題で辞職して1年半経ってから逮捕されて、 留置場に入ってました。 そこを出て、 10ヵ月後くらいに、 この前の参議院選に挑戦したんです。 その約1年を 「留置場から71万8125票まで」 って言っていますが、 ものすごく、 しんどかったんです。

 政治は難しいもんで、 皆さんの中にも私の立候補を 「ちょっと早いんちゃうか」 思った人は、 大勢いてはると思うんですね。 けれど、 政治っていうのは、 ある意味、 選挙に挑戦し続けないと、 力が続かないものなんです。 もし私が、 去年の参議院選挙に出てなかったら、 憲法のことでこんなに全国を回って話はできてなかったと思います。 政治家っていうのは、 人からの批判をシャワーのように浴びないと成長しない。 そんなことも学びました。

 

  より悪くなさそうな人に投票すれば それだけでも政治は変わるはず
 
阿部 清美ちゃんはピースボート、 私も脳死の臓器移植反対の市民運動から政治の世界へ入りました。 だから分かるでしょうけれど、 運動のなかには、 少しの考えの違いにこだわって大枠で手を組みにくい風潮があって、 私は、 それが憲法9条をめぐってもあると感じています。 9条はあった方が便利だし、 とことん使って、 戦争や弱肉強食の競争ではない、 新しい世界を目指せるなら、 そこで一致すればいいと思うでしょう?

 だけど、 たとえば、 自衛隊は合憲か違憲か、 という論争にこだわって手をつなげないというようなことがあるんです。 私は、 そこにとどまっていたら、 運動は敵から壊されるのではなく、 内側から壊れていくと思う。 いろいろな人がいて、 いろいろな主張があるけれど、 目指すもののために手をつなぐというのも共生です。 とくに、 憲法9条改悪の問題では、 統一戦線がいると思う。 歴史を見れば、 どこの国でも、 統一戦線がファシズムを止め、 時代を軌道修正してきたんですから。

辻元 私も、 憲法9条が大事だと思う人とは、 かなり広範な連携をした方がいいと思っています。 違いを見つけようと思ったら、 阿部さんと私の間だって千も二千もある (笑)。 でも、 政治を変えようとしたら、 同じところを見つけてつながっていくしかないじゃないですか。 政党は、 「悪さ比べ」 やと思います。 「よりまし」 ではなく、 「より悪くなさそう」 な方を選ぶ。 それぐらいでないと、 政治というのは変わらへんと思うんです。 自分と100%意見が同じ政党になんて一生巡り合いませんよ。 だから、 地方議会の選挙でポスター見てもよう分からんときも、 より悪くなさそうな人を選ぶことです。 選挙に行かへん人の1割が、 より悪くなさそうな人に投票するだけで、 政治は変わると思います。

阿部 いわゆる保守の側にも、 9条は変えるべきではないということで一致できる人がいますね。

 

  良質の保守との連携で 右翼ポピュリズムに対抗
 
辻元 日本にはこれまで戦争を嫌い、 国際関係を良好に保とうとする良質の保守の人たちと、 旧社会党的な勢力が、 バランスをとって舵取りをしてきたという側面があると思うんです。 そういう良質の保守の人たちは政治の世界にも経済界にもいて、 今の情勢を憂いているのではないでしょうか。

 今、 小泉さんをはじめ排外主義的ナショナリズムを煽っている政治家たちは、 保守というより、 右翼ポピュリズム (大衆迎合主義) だと思います。 外交っていうのは、 体制が違うところほど丁寧につきあわなアカンもんじゃありません? 体制が違うからといって、 乱暴な態度をとるのは外交ではないでしょう。

 ここで、 憲法9条を変えて 「集団的自衛権の行使」 を認め、 アメリカと一緒に戦争に突っ込んでいく道を選ぶのか、 それとも、 調停外交や軍縮や人道支援などを率先して推進する道を選ぶのか。 どちらの道にもリスクはありますが、 平和な社会の実現に近づくためには、 私は、 憲法9条を変えない選択の方がリスクは低いと考えています。 右翼ポピュリズムが徘徊している今だからこそ、 私は、 全国を回りながら、 とくに地域の経済界の人などにも、 リスクの問題としても、 どちらがいいと思いますか、 と語りかけていくつもりです。

阿部 よくぞ清美ちゃんを野に放ってくれたと思います。 時代は次の手を準備していたのかもしれませんね。



(「阿部とも子News ともことかえる通信No.20」(2005年7月号)に掲載)