宇野峰雪さんと語る
 

~ 基地、憲法、自衛隊と平和運動 ~

 
宇野 峰雪(うの・みねゆき)さん
1939年、新潟県生まれ。1962年、神奈川大法学部卒業。1964年、弁護士登録。1975年、 神奈川総合法律事務所を設立。1996年から神奈川平和運動センター代表。
 

 

 【対 談】憲法は「押しつけ」と言いつつ米軍の世界戦略に従う日本
 
医者になって今年で31年。小児医療の現場で長く目前の命に向き合ってきたため、 抽象的な「平和を語る」ことには若干のためらいがあります。 そこで今日は、地元神奈川の平和運動の現場でいつもお会いする弁護士で神奈川平和運動センター代表の 宇野峰雪さんに、基地問題、護憲・平和問題についてお聞きしたいと思います。 宇野さんとは、昨年12月、民主党の千葉景子、那谷屋正義両参議院議員とともに、横須賀基地への原子力空母配備の撤回を 求めてアメリカ国務省への直談判にもご一緒しました。
 厚木基地爆音訴訟とともに歩んできた30年
 
阿部 まず、 宇野さんが、 神奈川で取り組んでこられたことについて教えてください。

宇野  平和や人権を守るための訴訟はいろいろやってきました。 特に、 仲間と3人で作った神奈川総合法律事務所は、 この30年、 厚木基地爆音訴訟とともに歩んできたといってもいいでしょう。

 米軍厚木基地周辺の住民は、 飛来する戦闘機などの騒音被害に悩まされていて、 1960年には、 厚木基地爆音防止期成同盟 (爆同) が結成されました。 彼らは最初、 法務省の人権擁護局へ行きましたが、 「騒音は問題だが、 人権侵害はない」 と結論づけられたのです。

 そこで、 爆同は、 76年に米軍機の飛行差し止めと損害賠償を求め第一次厚木基地爆音訴訟をおこし、 できたばかりのぼくたちの事務所がこの訴訟を担当することになりました (95年、第一次訴訟、爆音被害には、 国に1億600万円の賠償金支払いを命じた判決が確定した。84年からの第二次訴訟も99年損害賠償が認められた。 97年からの第三次訴訟は2002年横浜地裁で損害賠償を認め、高裁で係争中)。

 また、 10年ほど前、 社会党が中心となって組織化した 「護憲・反安保」 の組織が改組され 「平和・人権・環境フォーラム」 を作ることを決めました。 神奈川では、 人権問題については 「人権センター」 が作られていたため、 機能が重ならないよう平和運動を担う 「平和運動センター」 という組織ができました。 それまでの 「護憲・反安保」 の組織は社会党の県代表が兼ねていたようですが、 政党の枠を超えるために、 ぼくが代表をお引き受けして早10年になります。

 

 

  跡地利用のアイデアを提案しながらの「基地返せ」を
 
阿部 米軍基地の再編にからんで、 機能強化されようとしている神奈川県内の基地問題の解決には何が必要でしょうか。

宇野  米軍の相模原補給廠については、 戦後60年ずっと使われてきて、 地元ではこのままだとさらに60年も100年も今の状態が続いてしまう、 いいかげんに返せという声が上がっています。

 厚木基地爆音訴訟で提起してきたのも、 騒音がうるさいから損害を求める、 ということだけではなく、 あれだけの基地は町の発展を阻害しているということでした。

 相模原駅の近くにデンと構えている補給廠がなくなれば、 相模原は、 都市としてもっといろいろな工夫ができるはずです。 跡地利用のアイデアと合わせて住民の返せという声が 力になるのではないか、という気がしています。

 自民党政権は一貫してアメリカの戦略を受け入れ、 特に、 小泉 (純一郎) 首相は、 自衛隊をイラクへ派遣するときも 「自主的に」 と、 強調しています。 しかし、 決定するのはすべてアメリカで、 日本がアメリカの世界戦略の決定に関与する余地はありません。 その意味では、 少しも自主的ではないし、 「押しつけ憲法」 どころの話ではありません。 そんな人たちが自主的な憲法を作って、 何をするのでしょう。 結局、 自衛隊をアメリカに協力させることになるでしょう。

 

  自民党のねらいは憲法を変えやすくすること
 
阿部  自民党の憲法草案には、 アメリカと共に集団自衛権を担えるように自衛隊を軍隊にする、 と書かれています。 私たちは、 どのように改憲と闘っていくべきでしょうか。

宇野 なにも憲法改正をしなくても、 政府が自衛隊は、 憲法が保持を禁じている戦力にあたらない、 と解釈を変えれば通ってしまうのが現状です。 地方自治に関わることでも、 先頃、 地方制度調査会が答申したように、 道州制を導入して都道府県を廃止するようになれば、 憲法を変えなくても住民投票のようなことは意味をなさなくなる可能性があります。

 自民党は、 どうしても憲法を変えなければならないわけではないけれど、 まず憲法を変える手続きを容易にして、 憲法を変えやすくするねらいがあると思われます。

 ですから、 今の憲法を変えないと自分たちの生活がどうにかなってしまうわけではなく、 むしろ変えることによって自分たちの生活がなし崩しにダメになっていくということを伝え、 改憲反対を訴えていくことが、 まだまだ有効ではないでしょうか。

阿部 私は、 生身の自衛隊員を取り巻く問題にも関心を持っています。 自衛隊員にはイジメが多く、 自殺する自衛隊員も後を絶ちません。 同じ年齢集団のなかでは自衛隊の自殺率は非常に高くなっています。 借金と麻薬の問題も広がっています。 さて、 この自衛隊を今後どうしていくべきだとお考えですか。

 

宇野   軍隊としての自衛隊は徐々に縮小しつつ、 災害救助や緊急な建設を含む国内外の災害救助の組織を充実していくべきです。

 自衛隊について考える上で、 日本という国を守る、 ということをどう理解するのかが重要です。 武力で日本を守ることが、 本当にできるでしょうか。 武力を持っていることによって攻められるかもしれません。

 自衛隊そのものを合憲と判断した場合でも、 そのあり方や使い方によっては、 憲法違反の状態になると判断できるでしょう。 理屈でいえば、 必要最小限を超えれば憲法違反ということになるでしょう。 では、 必要最小限とはどのくらいか、 どの範囲を超えると憲法違反なのか、 という議論も必要です。

 専守防衛だから自衛隊は合憲なのであって、 外国には誰がなんと言おうと行かない、 と表明することで、 なおさら日本が攻められる危険はなくなります。 憲法を変えて、 自衛隊を軍隊と位置づけ外国にも出ていくようになれば、 先に攻めないと本当に守ることにはならない、 という議論になっていくでしょう。

阿部  先日の予算委員会で、 自衛隊のイラク派遣を話題にしたのは社民党だけ。 国会は、 永田寿康議員の 「メール問題」 ですっかり攻守逆転してしまいました。 しかし、 最大のガセネタは、 イラクに大量破壊兵器がなかったことではないでしょうか。 この件について小泉首相は一度たりとも謝罪したことがありません。



(「阿部とも子News ともことかえる通信No.23」(2006年4月号)に掲載)