保坂展人さんと語る
 

~ 政権交代第2ステージ、社民党のこれから ~

 
保坂展人(ほさか・のぶと)さん
 1955年宮城県仙台生まれ。高校進学時の内申書をめぐり、16年間、内申書裁判をたたかう。ジャーナリストなどを経て、1996年、衆議院議員に初当選、2009年8月まで3期を務め、「国会の質問王」(朝日新聞)として活躍する。著書に『年金を問う』『共謀罪とは何か』(岩波ブックレット)、『どうなる!?高齢者の医療制度』(ジャパンマシニスト社)など。ブログ「保坂展人のどこどこ日記」・ツィッター連日更新中
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto

 

 【対 談】少子高齢化社会の課題に取り組む 子育て家庭、高齢者の声を国会に
 
 7月に行われる参議院議員選挙が間近に迫っています。昨年夏の衆議院議員選挙で歴史的な政権交代を実現し、社民党も連立政権の一員として政権運営に携わってきました。この選挙で残念ながら議席を失ってしまった参議院議員選挙予定候補者の保坂展人さんと、国会の外から見た日本の政治、これからの社民党のあり方について語り合いました(5月21日・対談実施。※保坂さんとの対談後、普天間基地移設をめぐる問題で福島瑞穂党首が閣僚を罷免されたことを受け、社民党は、連立政権を離脱しました)。

阿部
 保坂さんといえば、ついこの間まで一緒に働いていて、日常的に意見交換していた仲間です。国会を外から見ていてどんなことを感じていますか。
 ■メディアに色濃く残る小泉・竹中路線への逆戻りシフト■
 
保坂
 連立政権を山登りに例えれば、五合目まできたところといえるでしょう。風が強くなって、暗くなってきた。今の逆風は、主には、自民党時代に戻せという動きです。小泉・竹中の規制緩和路線で甘い汁を吸った人が、メディアや官僚など様々な分野の主要ポストにいます。特にひどいのが新聞の経済部で、自民党への逆戻りシフトが働いています。

阿部
 私は政策審議会長なので、政策に関わる場面が多いわけですが、この政権は政策の合意形成過程が藪の中なのです。政権交代したのは民意のおかげなのに、自らの存立基盤を危うくしてしまいます。

保坂
 民主党は、政権交代を目指して突き進んできて、五月病の状態が長く続いているのではないでしょうか。政権内はまだら模様で、あるところは自民党政権と変わり、あるところは変わっていません。
 普天間基地の移設先については、民主党のなかにも、県外・国外を目指している人もいますが、グアム・テニアン移設案は、米自治領北マリアナ諸島の上下院が、普天間飛行場のテニアン島への移設を誘致する決議を採択したにも関わらず、政権内で具体的に議論されませんでした。

阿部
 普天間基地移設については、政府が社民党、国民新党の意見を一応聞き置くという姿勢です。しかも、政府与党案だけで民主党案が出ませんでした。

保坂
 過去の連立政権を振り返れば、細川連立政権が瓦解したのは小沢一郎さんの手法が強引で、小沢さんと公明党・市川雄一さんで物事を決めてしまうという問題があったからです。その結果、政権離脱しました。その後の自社さ政権のスタートラインは政治路線というよりは手法でした。現在の連立政権とまったく異なるところです。
 
 ■情報公開と市民参加が広がる政策合意や審議軽視の問題も■
 
阿部
 小泉政権以来、多数を取った側が強行採決する、という手法は変わっていません。

保坂
 2自民党から来た小沢さんたちは、権力闘争には長けているけれど、審議会など国会の立法過程にはあまり興味がないようです。強行採決はイメージが悪く、安倍政権が強行採決し過ぎたことが、ボディブローのように効いて、「自民党を勝たせすぎた」として、有権者の支持を失いました。今度は「民主党を勝たせすぎた」と言われるでしょう。

阿部
 民主党も自民党も、次の参議院議員選挙では、タレントやスポーツ選手を候補者にしていますが、社民党は、生真面目に政策で勝負をかけたいものです。

保坂
 政権交代の意味は、前政権と比べて、情報公開と市民参加が広がったこと。官僚が隠蔽してきた情報をオープンにしたのが最大の成果でしょう。一方で、国会の審議を軽視しているのは問題です。自民党が99年に巨大与党になったときもひどかったですが、法案を1時間で採決することもあります。野党の自民党は、今まで自分たちがそれをやってきた側だから押し返す熱意が湧かないのかもしれませんが、国会の議事録が、今年、去年5年前、10年前と比べると階段を降りてくるように少なくなっています。  国会は、口蹄疫など緊急の課題には即時即応の対応をするために知恵を出すべきところですが、姿が見えません。
 
 ■まやかしの「脱官僚」に騙されない議員立法を進めたい■
 
阿部
 与党は質問をしないことにされてしまっていますが、その前の合意形成の場もありません。民主党議員も政策について理解、討論する場がないようです。

保坂
 自民党には部会がありました。

阿部
 今の民主党には部会もないので、当選したばかりの若手議員は鍛えられる場がありません。野党の自民党も法案の中身を質問するより、特定の政治家の「カネ」の問題を攻撃してばかり。結局、法案は、官僚主導で作られてしまいます。

保坂
 国会答弁の多くは、官僚が書いたものを大臣、副大臣、政務官が読んでいます。そうすると官僚主導で政策が作られるのに、官僚は責任を負わないということになります。形式的に官僚答弁をなくすということをメディアがそれを「脱官僚」として評価しているのはまずいです。

阿部
 当選して国会を再建しましょう。

保坂
 選挙は万年戦場でもいいけれど、国会が万年戦場だと、与野党共通の課題である社会保障改革も年金制度設計もできません。

阿部
 後期高齢者医療制度の廃止、障害者自立支援制度の廃止もこの4年のなかで取り組むことになっていますが、まだかたちになってはいません。少子高齢化社会で、非正規雇用が増加し、働いても食べていけない人が増加するなかで、党利党略を超えて良識の府である参議院に議論できる土壌がないと、日本が立ち枯れてしまいます。これから間違いなく政界再編の動きが始まるでしょう。

保坂
 新聞やテレビの政治記者は、基本的に立法のプロセスにあまり関心がなく、政治の権力闘争的なところに走ってしまいがちです。でも、議員立法ができないのは税金の無駄遣いです。ぼくは、社民党の役割は、数は多いけれど圧力団体として組織されていない高齢者、子育て中の親御さんなどの声、組織されざる多数の声が政治に参画できる回路を作ることだと考えています。

阿部
 数は多くてもバラバラにされている人の存在は見えなくされていますね。
 
 ■21世紀型の党は雨露しのぐハウス■
 
保坂
 さらに社民党を21世紀型に再編していきたいです。これまで社民党を支えてきた人やまじめに取り組んできた労働組合を否定するものではありませんが、今、地域で市民運動や生協運動をしてきた人たちも、普天間基地問題への対応を見て、社民党に注目してくれています。社民党の手法が、市民にとって快適で、開かれていて、平等の目線で、温かいのか、それを問い続けることができるかが市民に支持をされるためのカギです。
 既存政党の成り立ちは、戦前の日本共産党に倣った軍隊組織です。ぼくは、党はハウスであり、入って雨露しのぐところになればいいと考えています。入りたければ入る、出たくなったら出ます。イギリスには労働党のパブがあって、選挙の前からいつも政治の話をしています。そんなパブのような場もイメージしながら、党組織を21世紀型に再編したいです。それには、生活の上で困ったときの相互扶助機能が必要です。地域に根付いて、ここに来れば仕事が見つかるとか、介護や育児を助けてくれる人が見つかるとか、人の出会いの場になるような、それが新しい時代の政党のあり方だと思います。

阿部
 ますます保坂さんに当選してもらいたくなりました。参議院選挙、がんばっていきましょう。





(「阿部とも子News ともことかえる通信No.38」に掲載)