新着ニュース

【第36回憲法フォーラムレポート】「平和で豊かな沖縄と日本の実現へ」①

6月7日、藤沢商工会館ミナパークにて、玉城デニー沖縄県知事をお迎えして第36回憲法フォーラムを開催いたしました。

本記事では講演内容の詳細をお届けします。

県予算、初の9000億円越え

 まず令和8年度の沖縄県の予算について見ていただきたい。実は、私の県政期間の中では、1回だけ前年から下回ったことがあるのですが、コロナ禍による影響以降も成長はずっと続いています。「強くしなやかな沖縄を作る」ため、今年度は、9468億円という県政史上、過去最高の予算を組ませていただきました。
 なお、現在、県議会は与野党が拮抗しており、去年までは、予算編成の際、野党である自民党が反対し、それに公明党が加わり関係予算が通らない、組み替えせざるを得ない、ということがありました。しかし、今年度は9月に県知事選挙があるにもかかわらず、与野党全会一致、文句なしで予算を通していただきました。これは、県政において35年ぶりのことです(拍手)。
 この予算をもとに、県が掲げる五つの重点テーマに沿った施策を推進するための事業を実施します。その五つとは、①自立型経済の構築、②安心安全に暮らせる沖縄、③誰一人取り残さない沖縄らしい社会の構築、④平和の発信、⑤自然や歴史などの継承発展――です。では、内訳について見てみましょう。
 県税は、県財政にとってもっとも重要な財源の一つですが、令和6年度の決算でも1997億円、決算ベースでも過去最高の順調な推移を見せています。当初予算と国からの財政支援である沖縄振興予算の推移を見ると、後者については、年々下がってきています。これにより、市町村のとくに道路を作ったり港を整備したりするハード事業は、大きな影響を受けています。しかし、県の順調な実入りを背景に、落ち込んでいる沖縄振興予算の分を、補完しています。
 一方、県内総生産と一人当たりの県民所得を見ると、コロナ禍に見舞われた令和2年にガクンと落ち込みましたが、そこから順調な回復を見せています。
 次に就業者数を見てみましょう。こちらも順調に推移しています。最新の実績だと、第1次産業就業者数全体が3.5%、第2次産業は13.6%、そして第3次産業、いわゆるサービス産業が81.2%。復帰当時の1972年から、3次産業の比重が高いという点は、いまも変わっていません。失業者数は、平成28年は5.4%。太田昌国知事のときには10%近くあり、県政不況といわれ、そのため知事選で負けてしまった。しかし、それ以降、どんどん経済が回復し、いまは3%台。この3%については、就労希望者の「こういう仕事をしたい」という要望と、企業側の「こういう人材が欲しい」という求人要件とのミスマッチが起こっているのが大きな要因。これを解消するため、いま県でさまざまな事業を行っていこうと考えています。
 続いて観光客数。昨年度の入域観光客数は、速報値で1076万人。開業してから久しいモノレール「ゆいレール」は、何年経っても黒字にならなかったけれど、延長した結果、営業収益・純利益ともに過去最高益となる2期連続の黒字を達成しています。これは「需要があるから供給する」という考え方ではなく、「供給して需要を作る」という考え方に転換したからです。
 我々は、新時代の沖縄に向け、好循環によって回していこうと考えています。あらゆる世代への支援策を作り、必要なところに届ける。それによって幸福を実感できる島を作っていけば、観光やさまざまな産業が順調に伸びていくという考え方です。それが実証できたと感じています。経済も2年連続のプラス成長。その財源を元に、初の9000億円台の予算を組むことができた。こうやって好循環をリンクさせていって、沖縄をさらに発展させていこうと取り組みを進めています。
 そして、新時代沖縄の到来に向け、財源に関しては、各省計上予算の国庫補助金やあとあと交付税として返ってくる有利な県債などさまざまなものを積極的に活用しています。また、執行部体制の強化として、子ども未来部を設置し、さらに、平和地域外交推進課、グローバルマーケット戦略課、女性力ダイバシティ推進課など、県民の求めている政策を進めるためのセクションを新たに編成しました。

 誰一人取り残さない

 具体的な施策について紹介します。「誰一人取り残さないこどもまんなか」政策として、沖縄は日本一の子育てがしやすい環境を作ることをめざしています。「こども医療費助成制度」により、県が子どもの医療費の2分の1を補助していますが、以前は各市町村の財政力によって対象年齢がバラバラでした。また、通院費の助成は、窓口で払う必要のない原物給付といったん窓口で支払い、後で戻ってくる償還払いに分かれていました。これを令和4年、1年半かけて話し合い、すべての市町村で、「中学生まですべて現物給付(窓口無料)」とし、そのための予算として、県負担分の30.6億円を計上しました。
 学校給食費についても、まず、中学校の給食費半額を昨年から実施。そしたら国が令和8年から、「小学校の給食費を無償」と決めた。これにより1人当たり5200円を給食費として担保できることになりました。
 ほかにも、ひとり親世帯・低所得世帯に対し、部活動で沖縄本島への大会、あるいは沖縄本島から県外への大会に参加する場合、その費用支援の仕組みも作りました。これまでも教育委員会が予算を作っていたのですが、圧倒的に足りなかった。離島も抱えているので、本島での大会に来る場合、渡航費がかかり、ましてや全国大会だとさらに費用がかさむ。そこで、いままでの3倍の予算をつけ、これを基金にレギュラー以外もできるだけ参加できるよう、新たな仕組みを作りました。
 こうした政策を作る実施する上で、われわれがいま重視しているのが、県内でさまざまな方々と車座になって、提案してもらう「対話キャラバン」です。2期目の4年間で、五つのテーマで対話をしましたが、「ひとり親家庭の支援」もその一つ。それ以外のテーマは、「労働需給ミスマッチの解消」、「なじみの地域でいつまでも暮らせる社会」、「若者たちが平和継承を考える」、「学校給食における地産地消」。「若者たちが平和継承を考える」では、子どもたちがフィールドワークを行い、グループディスカッションをした上で、知事に「こういう平和教育をやってほしい、平和政策をやってほしい」という政策を提言します。沖縄の平和教育は、子どもたちがあらゆる機会を通じて自分たちで幅広く調べ、考え、検討し、そしてそれを自分たちの未来につなげていく――そういった形を大切にしようと考えています。
 ここから出た提案を具現化するため予算を組み、取り組みを進めています。そしてその取り組みを通じ、人生のライフステージのあらゆる世代、あらゆる段階において、「誰一人取り残さない沖縄」を実現していこうと考えています。

 減らない基地負担と不平等な地位協定

 ここから、基地問題の話をさせていただきます。まず、沖縄の基地の現状についてです。戦後、本土で基地の整備・縮小が進む中、沖縄では、1972年の本土復帰以降も、日米安保条約に基づき、米軍の提供施設・区域の多くが引き継がれ、県民は過重な基地負担を背負わされ続けてきました。本土復帰した1972年は日本全体の74.7%が沖縄に集中していました。本土の基地の整理・縮小が進んだ分、沖縄の負担は上がったのです。この構造がなかなか全国の皆さんには届いていないかもしれません。是非、これを自分ごととして理解してもらいたい。
 現在の米軍専用施設面積の割合を見ると、沖縄は70.3%、あとは、青森9%、神奈川5.6%、東京5%、山口3.3、長崎1.7、北海道1.6、広島県1.3、その他2.0と続きます。沖縄は、国土全体の0.6%ほどしかないのに、そこに70.3%が集中している。実は、それ以外にも、本島を取り囲むように、多くの米軍の空域・海域があります。ゆえに、沖縄近海で訓練が行われるわけです。
 次に米軍の犯罪について。とくに大きかったのは、1995年の米兵3人による少女暴行事件です。この事件を受け、普天間基地を5~7年以内に全面返還すると決まりました。しかし、その後、普天間の辺野古移設が決まり、それが唯一の解決策として工事が続けられ、31年経っても、いまだ問題は解決に至っていません。
 沖縄の基地問題は、時間がかかるのはもちろんですが、問題の根底に、日米地位協定があります。沖縄県では、米国が他の同盟国と結んでいる地位協定について、NATO加盟国や韓国など当事国へ出向き、直接話を聞いて調べてみました。すると、日本だけが地位協定に国内法が適応されないことが分かった。ほかの国は、管理権、訓練、演習、航空機事故などで国内法が原則適応されます。韓国は原則不適応ですが、考え方は日本と少し異なる。日本だけがなぜ日米地位協定を改定できないのか、という問題について、皆さんに考えていただきたいのです。