5月28日に阿部とも子が提出した「ALPS処理水の濃度に考慮されていない核種があることに関する質問主意書
への政府答弁書が6月9日に、閣議決定されました。
質問と答弁概要(赤字)は以下の通りです。
ALPS処理水の濃度に考慮されていない核種があることに関する質問主意書
経産省は東京電力株式会社福島第一原子力発電所の多核種除去設備等処理水(以後、ALPS処理水)に、「関係者の御意見を伺う場」(以後、御意見を伺う場)を四月から五月に計三回開催し、同省が選んだ関係者が出席して意見を述べた一方、東京電力は出席せず、双方向の質疑は行われていない。
一方、原発ゼロの会が、経産省、原子力規制庁、東京電力にヒアリング(以下、ヒアリング)を行い、双方向で質疑を繰り返した結果、判明した点がある。
そこで、判明点の確認を兼ねて、以下尋ねる。
一 二〇一九年六月十七日の原子力規制委員会特定原子力施設監視・評価検討会で東京電力が示した「多核種除去設備等処理水の全ベータ値と主要七核種合計値とのかい離調査結果について」で、東京電力は、全ベータ値と「主要七核種」とする核種の合計値には乖離があり、乖離の主要因は炭素十四(C‐14)とテクネシウム九十九であるという結果を明らかにし、①ALPA処理水の処分にあたり、環境へ放出する場合は処分前に「告示濃度限度比総和」(以後、告示比総和)一未満になるように二次処理を実施する、②今後、告示比総和にC‐14の寄与も考慮する旨を含めた「考察・まとめ」を発表した。
東京電力が「考察・まとめ」で示した①②の考え方が、今後もALPS処理水の取扱いにおいて維持されると原子力規制庁が認識していることがヒアリングで確認されたが、間違いはないか。
【問一への答弁(概要)】
御指摘の①②の考え方が「今後もALPS処理水の取扱いにおいて維持される」かについては、東京電力が原子炉等規制法第64条の3第2項に基づく「福島第一原子力発電所 特定原子力施設に係る実施計画」におけるALPS処理の取扱いに係る実施計画の変更認可の申請書を提出すれば、原子力規制委員会が審査する。
二 東京電力が二〇二〇年三月二十四日に公表した「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書を受けた当社の検討素案」(以後、素案)で示した告示比総和には六十二核種が考慮されているが、いまだにC‐14は考慮されていないことがヒアリングでは確認された。
1 東京電力は全タンクを測定し、告示比総和にC‐14を考慮するとの原子力規制庁の認識も確認されたが、間違いはないか。
【問二の1への答弁(概要)】
御指摘のように「東京電力は全タンクを測定し、告示比総和にC‐14を考慮する」との認識を示したことは、原子力規制庁において把握している。
2 告示比総和にはトリチウムも考慮にいれるべきではないか。
【問二の2への答弁(概要)】
お尋ねについては、トリチウムはALPSによって取り除くことができないこと等を踏まえ、原子力災害対策本部の下に設置されALPS処理水の取扱いに関する小委員会が令和2年2月10日に公表した報告書(以下、「報告書」)において、「トリチウム以外の放射性物質について告示濃度限度比総和一未満を満たすことを今後の対応方針として決定」とされており、ALPS処理水の「二次処理」の対象にトリチウムを含まないこととされている。
3 経産省による御意見を伺う場の開催や「書面による御意見の募集」は、東京電力が告示比総和にトリチウムとC‐14の寄与を考慮した後に、改めて、経産省が選ぶ関係者に限らず、公募も含めて、双方向で質疑ができる形で行うべきではないか。
【問二の3への答弁(概要)】
今後も、ALPS処理水の取扱いについて、広く全国から意見を聴くことができるようにするため、書面での意見募集を行い、また報告書を踏まえ、地元自治体や農振水産業者を始めとした幅広い関係者から意見を聴いてまいりたい。
三 東京電力株式会社福島第一原子力発電所は、いわゆる原子炉等規制法第六十四条の二に基づく「特定原子力施設」に指定された。
原子力規制委員会は、二〇一二年十一月七日に決定した「特定原子力施設への指定に際し東京電力株式会社福島第一原子力発電所に対して求める措置を講ずべき事項について」(以後、原子力委員会決定)で、東京電力に対して、瓦礫や汚染水等による敷地境界における実効線量を、二〇一三年三月までに年一ミリシーベルト未満とすることを求めた。
1 東京電力は三年遅れで二〇一六年三月にようやく敷地境界における実効線量年一ミリシーベルト未満(計年〇・九六ミリシーベルト)を達成した。三年遅れとなった理由はなんだったか、政府の把握するところを明らかにされたい。
【問三の1への答弁(概要)】
お尋ねの「敷地境界における実効線量を2013年3月までに年間1ミリシーベルト未満とすることは」2013年3月に達成された。(しかし)その後、同年4月に地下貯水槽に貯蔵されていた汚染水が漏えいし、この拡大を防ぐため、汚染水が敷地境界近くのタンクに移送されたこと等により、年間1ミリシーベルト未満を上回ることになった。このため、更なる線量低減対策等の措置が講じられ、2016年3月に未満となった。
2 敷地内には汚染源が複数あるため、東京電力では、実効線量年一ミリシーベルト未満の内訳は、液体廃棄物の排水に起因する実効線量を年〇・二二ミリシーベルト、気体廃棄物の放出に起因する実効線量を年〇・〇三ミリシーベルト、汚染水タンクに起因する直接線・スカイシャインを年〇・二一ミリシーベルト、タンク以外に起因する直接線・スカイシャイン線を年〇・四四ミリシーベルト、構内散水に起因する直接線・スカイシャイン線を年〇・〇六六ミリシーベルトとした。
ヒアリングにおいては、原子力規制庁も、液体廃棄物の排水に起因する実効線量の内訳は年〇・二二ミリシーベルトであると認識していることが確認されたが、間違いはないか。また政府の把握する液体廃棄物以外に起因する実効線量の最新の内訳も明らかにされたい。
【問三の2への答弁(概要)】
原子力規制庁において、1Fからくみ上げた地下水等の排水に起因する実効線量が年間0.22ミリシーベルトであることを確認している。
また、実施計画において、地下水等の排水以外に起因する敷地境界における実効線量の内訳は、
・気体廃棄物の放出に起因する0.03ミリシーベルト、
・敷地内各施設からの直接線・スカイシャインに起因する0.59ミリシーベルト、
・構内散水したせき内雨水の処理済水のトリチウムの吸入摂取に起因する約0.033ミリシーベルト、
・構内散水した第5,第6号機滞留水の処理済水の地表に沈着した放射性物質からのガンマ線に起因する実効線量が年間約0.042ミリシーベルト、
であること原子力規制庁において確認している。
3 素案には、放出前にトリチウム以外の核種が告示比総和一未満であることを確認する旨が書かれている。しかし、原子力委員会決定に基づけば、告示比総和一未満であるだけではなく、かつ同時に、液体廃棄物の排水に起因する実効線量の内訳は年〇・二二ミリシーベルト以内でなければならない。この考え方を原子力規制庁が維持していることも、ヒアリングでは確認されたが、間違いはないか。
4 原子力委員会決定に基づいて定められている敷地境界における実効線量年一ミリシーベルト未満のうち、液体廃棄物由来の実効線量を年〇・二二ミリシーベルト以内に抑えるためには、素案にあるように海水中のトリチウムの告示濃度限度が水一リットル中六万ベクレルであるところ、運用基準は地下水バイパスとサブドレンを合わせて水一リットル中千五百ベクレルである。
地下水バイパスとサブドレンに加えてALPS処理水を液体廃棄物として処理する場合も、敷地境界における実効線量年一ミリシーベルト未満を超えないために、トリチウムの運用目標である一リットル中千五百ベクレルに変化はないと考えるがどうか。
【問三の3、4への答弁(概要)】
原子力規制委員会は、東京電力に対して、敷地境界における実効線量を、年間1ミリシーベルト未満とすることを求めており、ALPS処理水の処分は、これを満たす範囲で行われることが必要であると認識している。
またご指摘の「0.22ミリシーベルト以内」については、東京電力が、実施計画において、トリチウムを1リットル当たり1500ベクレルとする等の運用目標を満足するように、敷地内でくみ上げた地下水等を排水する場合に関する実効線量であり、ALPS処理水を処分する場合に関するものではない。
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