『臨時のコロナ病棟の開設を早急に 大規模で集中的な対応を』
阿部知子の記事が2021年1月28日、毎日新聞の政治プレミアに掲載されました。リンクはこちら
深刻さを増す医療の逼迫
新年早々、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく2度目の緊急事態宣言が首都圏1都3県に発出された。期間は1月8日から2月7日まで。14日から関西、東海などの7府県が対象に追加された。
それに伴って飲食店の営業時間短縮への協力金支給やイベント開催制限、テレワークによる出勤者7割減などが示されている。こうした行動制限や営業短縮によって、新たな陽性者の激増は多少なりとも抑えられる可能性はある。が、緊急事態宣言の大きな背景である医療体制の逼迫(ひっぱく)については何ら手が打たれていない状態が続いている。
新型コロナウイルス感染拡大の中で、医療の受け皿として、重症者の受け入れ病棟や集中治療室(ICU)の不足が報じられ、状況は深刻度を増す一方だ。加えて無症状から中等症患者の受け入れ体制の不整備は、自宅やホテルでの入院待機・療養中の死亡という不幸な事態を生む要因になっている。
私の選挙区がある神奈川県では、先のダイヤモンド・プリンセス号の横浜寄港の経験から、まず重点病院を指定し、無症状・軽症者は自宅や宿泊施設で療養、中等症は重点病院で、重症を高度医療機関で受け入れる「神奈川方式」に取り組んだ。
また初回の緊急事態宣言が発令された昨年4月には、新型インフルエンザ特措法第48条に基づいて、中等症用として、コロナ専門病床を180床、プレハブで建設するなど最大限の取り組みを進めてきた。それでも1月26日現在、入院患者935人に対して療養者は自宅(2619人)、宿泊(267人)で2886人となっており、感染爆発に追いついていない。
医療フォロー態勢の抜本的改善を
この状況を改善するため、今、何よりも先に行うべきは、中国での経験で知られた大規模な臨時のコロナ病棟の開設と、大学病院を含め官民を問わない医療機関や医師会などへの人材派遣の協力要請である。加えて、無症状者、軽症者も含めた医療フォロー態勢を開業医の協力を得ながら抜本的に改善することも重要である。
臨時の医療施設は、目的がはっきりしているため、早期検査や感染者の隔離、治療などを集中して対応できる。中国のように病棟を建設する土地がなければ、広いイベント会場を簡易的に改修して医療施設化してはどうか。また、多くの地域で移転や新築に伴って空いた病棟もある。既存の稼働中の病院をコロナ専門病院に指定して対応するよりも効率的ともいえるし、地域医療に与える影響も少ない。
そもそも新型インフルエンザ特措法は、緊急事態宣言発令の有無にかかわらず、医療者にその治療にあたることを要請できる仕組みがある(第31条)。その協力を可能にするには、強制力以上に政府側の真摯(しんし)な働きかけが前提である。また、この間の医療機関の減収をしっかり補塡(ほてん)する姿勢を示すことも不可欠である。さらに場合によっては自衛隊の医務官、看護職をはじめとする医療従事者にも協力を求める必要があるだろう。
昨年2月、横浜にダイヤモンド・プリンセス号が寄港し、大量のコロナ感染者が発生した時、DMAT(災害派遣医療チーム)はもちろんのこと、神奈川県や横浜市の医師会の協力、さらには自衛隊の協力もあって何とか危機を乗り越えた経験がある。また自衛隊が受け入れた104人の感染者の報告によれば、無症状者の半数近くがCT検査で肺病変があり、また、中等症から重症にあっても適切な酸素投与があれば救命可能な症例が多いと考えられたという。そのような患者を含め、早期に診断、治療を行ったことが全例の救命を可能としたことは特記してよい。
後手では被害拡大
感染拡大を収束させるのは、初動が大事、初期が大事であり、後手後手に回っては被害を拡大する一方だ。早期の検査、隔離、診断、治療こそ、コロナ感染症の危機を乗り切る道である。