2021/04/28

原発の発電コスト検証に関する質問主意書を提出しました。

4月27日に「エネルギー基本計画見直しにおける原発の発電コスト検証に関する質問主意書」を提出しました。

内容は以下のとおりです。政府答弁は、GWを挟んで5月14日となります。

エネルギー基本計画見直しにおける原発の発電コスト検証に関する質問主意書

 

 経済産業省は、「エネルギー基本計画」の見直しに向け、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会に「発電コスト検証ワーキンググループ」(WG)を設置し、発電コストの検証を進めている。

 発電コストは、分母に発電電力量を、分子に資本費、運転維持費、燃料費、社会的費用を置いて、建設から廃止までのコストを実在しない「モデルプラント」を使って試算するとしている。このモデルプラント方式では、恣意的な数値を入れれば、発電コストを高くも低くもできるとの指摘がある。

 ここでは想定の恣意性に問題があると指摘されている原子力発電の発電コストに限定して、以下質問する。

 

一 モデルプラント方式では、分母に試算される設備稼働率等を上げる一方、分子に置く資本費(建設費+追加的安全対策費)、事故リスク対応費用を圧縮した上で、事故発生確率を下げれば、原発の発電コストを恣意的に低く見積もることが可能である。そうした場合、二〇一一年三月に起きた福島第一原子力発電所(以後、1F)事故を踏まえない「安全神話」へと逆戻りするおそれがあるのではないか。

 

二 設備稼働率等について

 1 WGにおける二〇一五年の検証では、原発の「設備稼働率が七~八割を想定」していたが、再稼働原発九基の運転開始から二〇一九年末までの設備利用率平均は七十%を切っている。さらに、原子力委員会発行の「令和元年度版原子力白書」(百二十四頁)によると、原発事故の翌年二〇一二年度から二〇一八年度に至るまで設備稼働率が二割を超えた年度はない。設備稼働率の試算は過大評価ではないか。

 

 2 二〇一五年の検証では、原子力については四十三基の稼働を想定していたが、二〇二一年四月現在、定期検査中で停まっているものを含めて稼働可能な原発は九基のみである。その他に新規制基準に適合した原発は、不祥事などで稼働の見込みがない柏崎刈羽原発を含めたとしても七基で、合計十六基である。二〇二一年の検証では、この現状を反映するのか。

 

三 建設費について

 国際的に見て建設費は上昇しているにもかかわらず、WGの検証では建設費の上昇に関する数々の論文や報告書が無視されている。

 日本の原子炉メーカーによる英国、トルコ、ベトナム、リトアニアへの原発輸出事業も、建設費用の増加を背景にして、ことごとく失敗した。また原発の建設コストが右肩上がりになった米国では、東芝が傘下に収めたウェスチングハウスが巨額損失で破たんし、建設計画から撤退した。

 日本国内でも、1F事故後に規制が強化されたことから、米国と同様、新規原発の建設費が高騰する可能性が高いのではないか。

 

四 追加的安全対策費について

 1 追加的安全対策費は、電力各社が多額の投資を行っている実態があるにもかかわらず、多くの項目で費用を除外しているので、発電コストの過小評価になってしまう。

①「意図的な航空機衝突への対応」における敷地造成費用の約一割、

②「格納容器破損防止対策」費用の約五割、

③「炉心損傷防止対策」費用の約五割、

④その他、「緊急時対策所の設置、各項目に含まれない給水・電源等の配置」などの約一割、

⑤配管漏えい検知や拡大防止装置の設置など内部溢水に対する対策費の約八割、

⑥防火帯の設置や竜巻飛来物対策、飛散防止対策、火山対策など自然現象に対する対策費のすべて、

⑦「感知器や消火設備」など火災に対する対策費の約五割、

⑧非常用ディーゼル発電機燃料油貯蔵タンク増設などの約二割、

⑨耐震裕度向上工事や周辺斜面安定化対策などの約六割、

⑩防潮堤の設置費のすべて、

についてなぜ除外するのか、それぞれ具体的に根拠を明らかにされたい。

 

 2 追加的安全対策費のうち、四1の除外は再稼働済みの九基を基にした試算だが、新設の場合はどのように試算するのか。

 たとえば、欧州や米国では、新設時には航空機の衝突対策や、原子炉の溶融事故対策のためにメルトダウンした燃料を受けるコアキャッチャー整備が要求される。

 一方、日本では、格納容器の二重化やコアキャッチャーは二〇一三年に施行した新規制基準では要求されていない。しかし、二〇一七年十二月六日の原子力規制委員長の記者会見で、その必要性を問われ、更田委員長は、「仮に新設炉に関しての検討をしなければならない状況に至った場合には」考えると回答した。

 仮にも「新設炉に関しての検討をしなければならない」対策費を試算に入れなければ、発電コストの恣意的な過小評価と言わざるを得ないのではないか。

 

 3 追加的安全対策費には、災害対策基本法第三十四条に基づく国の防災基本計画の策定に必要なコストや、原子力災害対策特別措置法に基づく原子力災害対策指針に沿って「地域防災計画」(原子力災害対策編)を作成することを義務づけられた自治体の行政コストが含まれていないが、試算に入れなければ、安全対策費の過小評価となるのではないか。

 

五 事故リスク対応費用について

 1 二〇一一年のエネルギー・環境会議「コスト等検証委員会」では事故リスク対応費用を一兆円と見積もり、原発の発電コストを〇・一円/キロワットアワー(kWh)増加させたが、二〇一五年のWGが約十分の一の〇・〇一~〇・〇三円/kWhに圧縮したのは、恣意的ではないか。

 2 日本経済研究センターは事故リスク対応費用を三十五〜八十兆円と試算しているが、WGでは二〇一六年の東京電力改革・一F問題委員会が示した二十一・五兆円を試算に使っている。しかし、一Fの廃炉費用八兆円は根拠が乏しく、これを含んだ二十一・五兆円からは、

①燃料デブリの処理費、最終処分費用、

②その他の放射性廃棄物。例えば、原発(PWR)一基の廃炉で生じる放射性廃棄物の千四百倍に達するとされるL1廃棄物を含む各種の廃棄物処分費用、

③除去土壌の最終処分費用

が除外されている。なぜか、具体的に明らかにされたい。

 

六 高レベル放射性廃棄物処分のコストについて

 資源エネルギー庁は、第三回WG資料二で高レベル放射性廃棄物処分費については、「直近において、国(経済産業省)が算定している処分費を反映」としている。

しかし、現時点で、高レベル放射性廃棄物処分場の「安全の確保の規制」は、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律第二十条に基づき、「別に法律で定める」とされているだけで未策定である。二〇二〇年十二月三日の衆議院原子力問題調査特別委員会で、更田原子力規制委員会委員長が、「高レベル放射性廃棄物の最終処分に係る規制基準、これは原子炉等規制法に基づいて原子力規制委員会規則で定めることとされておりますけれども、この基準についてはまだ定めておりません」と答弁したとおりである。

 高レベル放射性廃棄物処分場に求められる「安全の確保の規制」基準がないままで、どのように、処分費を試算するのか。過小評価になり得るのではないか。

 

七 事故発生確率について

 政府は「世界一の規制基準」という虚構を振りかざしてきたが、地震大国日本における原発の耐震基準の基となる基準地震動は、近年の地震の実績を下回っていることが近年明らかになってきている。従って炉心損傷頻度や大規模放出頻度など事故発生確率は上がっていると考えるべきだが、検証ではどのような想定を行っているのか。

 

八 二〇一五年の発電コストの検証では、原発はすべての電源の中で最も安いという試算結果を打ち出したが、今回は、モデルプラント方式を止めて、右に指摘した恣意性を排除し、現実のデータに基づいた試算を行うべきではないか。

 

 右質問する。

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