2021/05/10

5/6「雨畑ダムの堆砂と水利権に関する質問主意書」提出

 

阿部知子は5月6日に「雨畑ダムの堆砂と水利権に関する質問主意書」を提出しました。答弁は5月18日です。

 

 

   雨畑ダムの堆砂と水利権に関する質問主意書

 

国土交通省が河川法第二十六条に基づいて建設を許可した日本軽金属株式会社(以後、日軽金)の雨畑ダム(山梨県南巨摩郡早川町)は、上流から押し流された土砂で埋まり、周辺の集落に深刻な土砂被害および浸水被害等を生じさせている。

次の被害はいつ起きるとも分からず、一刻も早い対応が必要であるため、以下、質問する。

 

一 雨畑ダムが生じさせた浸水被害等について

日軽金は、二〇一九年八月の台風十号および十月の台風十九号による豪雨で、「雨畑ダム上流の雨畑川の水位が上昇し、周辺地域にて浸水被害を発生させてしまいました」と謝罪した。

同年九月からは、国土交通省、山梨県、早川町と協議する「雨畑地区土砂対策検討会」(以下、検討会)を設置し、第二回検討会では、「周辺地域である本村地区の畑等一部用地の浸水、道路崩壊による上流地区での孤立世帯発生、電柱崩壊により上流地区停電発生および固定電話等通信設備不通発生」などの被害が起きたと明らかにした。

また、「応急対策の実施に加え、国土交通省関東地方整備局甲府河川国道事務所、山梨県と検討会を設置し、恒久的な対策を検討してまいります」とウェブサイト上で明らかにしている。

 

1 今年も、もうすぐ出水の時期を迎えるが、応急対策はどこまで進んだか。応急対策で安全が確保できない場合の住民の緊急避難計画は立てられているのか、政府として把握しているところを問う。

 

2 河川法第七十五条第二項第三号は、「洪水、津波、高潮その他の天然現象により河川の状況が変化したことにより、許可、登録又は承認に係る工事その他の行為が河川管理上著しい支障を生ずることとなつたとき」について定めている。二〇一九年八月の台風十号および十月の台風十九号による豪雨で雨畑ダム周辺地域に生じた被害は、天然現象により河川の状況が変化して起きた河川管理上著しい支障であると、国は認識しているか。

 

二 雨畑ダムの堆砂について

国土交通省は、毎年度、全国の同省所管のダム堆砂状況を調査している。国土交通省に確認したところ、雨畑ダムの堆砂量(令和元年度末時点)は、総貯水量約千三百六十五万立方メートルに対し、約千二百五十七万立方メートルだという。しかし、これは、常時満水位以下に溜まった堆砂量に過ぎず、常時満水位より上に積もった土砂はカウントしないとしている。

 

1 カウントしないのはなぜか。雨畑ダムで、常時満水位よりも上に積もった土砂も含めた最新の堆砂量は何立方メートルで、検討会で協議される対策には、常時満水位より上の堆砂量は含まれているのか、いないのか、政府が把握していることを答えられたい。

 

2 全国のダム堆砂状況を調査するのは何のためか。雨畑ダム以外にも、常時満水位より上に積もった土砂を堆砂量に含めていないダムがあるのか。

 

3 二〇一九年十二月に開催された第二回検討会で国土交通省関東地方整備局が配付した「雨畑ダム堆砂対策 対応例」によれば、二年以内に常時満水位以上に堆積している土砂約三百万立方メートルを撤去し、「排出困難なものはダム湖に中州として仮置き」すると書かれている。しかし、河川区域から排出しなければ、計算上の堆砂量が減るだけで、ダム湖の中洲に積み上がる土砂は増えて、応急対策にすらならない。この対応例は実際に採用されたのか。国の把握するところを明らかにされたい。

 

4 河川管理者は、工作物が河川管理上著しい支障を生じさせていると判断した場合、河川法第七十五条に基づいて、工作物の除去を命じることができる。応急対策を進めつつ、雨畑ダムの撤去を、恒久的な対策とする選択肢から外すべきではないと考えるがどうか。

 

三 日軽金が二〇二〇年四月に策定した「雨畑ダム堆砂対策基本計画」には、国土交通省関東地方整備局甲府河川国道事務所長からの指摘事項として、「変形等の異常は見られないものの堆砂量が堆砂容量を超過しているため、ダム堤体への影響などについて検討すること」が書かれている。この指摘事項についてはその後どのような検討が行われたのか、政府として把握しているところを答えられたい。また、堆砂によってダム堤体が崩壊する危険性を国はどのように考えているのか。

 

四 雨畑ダムの水利権について

日軽金は、雨畑ダムの貯水により角瀬発電所で発電を行うために、河川法第二十三条に基づく流水の占用の許可を二〇三五年まで得ている。

同許可を得るには、「行政手続法の施行に伴う河川法等における処分の審査基準の策定等について」(平成六年九月三十日付建河政発第五十二号)で定められた審査基準を満たす必要がある。その審査基準の要点は①公共の福祉の増進に資すること、②水利使用の実行の確実性が確保されていること、③安定的に取水を行えるものであること、④治水上その他の公益上の支障を生じさせるおそれがないことの四項目である。

 

1 角瀬発電所は、二〇一九年八月の台風十号以来、現在に至るまで発電を行っていない。総貯水量を優に超える堆砂によって②も③も満たせない状態であると考える。また、雨畑ダムは、すでに治水上その他の公益上の支障を生じさせ、①も④も満たせない状態であると考える。政府は、今なお、雨畑ダムが流水の占用の許可基準を満たしていると考えているのか。

 

2 第一回検討会資料には、雨畑ダムの建設前の調査で百年間で総貯水容量の半分(六百万立方メートル)が土砂で埋まると予測していたものが、ダム運用開始から、わずか十年で五百万立方メートルが堆砂していたと書かれている。雨畑川流域を見ても地質を見ても、堆砂は今後も止まるとは考えられない。流水の占用の許可基準を満たせない状態が続くのであれば、二〇三五年までの水利権の許可期間の終了を待たず、その許可を取り消すべきではないか。

 

五 国土交通省は流域住民の命と財産を土砂災害や浸水被害から守るために、河川法第二十六条に基づいて河川管理者として建設を許可した工作物である雨畑ダムの許可を取り消すべきではないか。

 

右質問する。

衆議院HPリンクはこちら

DSC_8177.JPG

DSC_8180.JPG

4月10日に現地へ行き、地元住民からもお話を聞きました。

かつては深い谷、ダムができてからはダム湖面だったところが、現在は上流から押し寄せた土砂に埋もれています。