外国人技能実習生(実習生)の出産後の実習再開を巡って問題が発生しました。
9月1日、法務省と厚労省と話し合い、その問題を解消して、実習再開を可能とすることができました。
相次ぐ実習生へのマタハラ相談
技能実習制度では、実習生は家族を伴って日本に滞在することが認められていません。しかし、日本でも「できちゃった婚」は4組に1組以上の時代。実習生の妊娠も想定内と言うべきです。
これまでに少なくない相談が寄せられてきました。2019年には、妊娠したら強制送還するとの契約を結ばされた事案が持ち込まれ、質問主意書(リンク)で、以下の労働法令は「技能実習生が妊娠、出産等をした場合も対象とする」との明確な答弁(リンク)を得ました。
男女雇用機会均等法
■第9条(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)
事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない
■第12条(妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置)
事業主は、雇用する女性労働者が母子保健法の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければならない。
労働基準法
■第65条(産前産後)
使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあつては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
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同年3月には、法務省、厚生労働省、外国人技能実習機構から妊娠を理由に不利益な取扱いをしてはならないという、雇用側(実習実施者、監理団体)に向けた注意喚起(リンク)も発出させました。
また、働く女性の持つ権利を実習生にも知ってもらうために、実習生手帳(リンク)にも書きこんでもらいました。生まれた赤ちゃんは「特定活動」というビザ取得が可能です。
ところが!
今回持ち込まれた事案では、遵法精神のある雇用側の了承を得て「技能実習実施困難時届」(リンク)を提出、一時中断(産前産後育休)後に実習を再開したいと入管に在留資格延長を申請したところ、法務省の出先機関から、「再開は不可」と告げられたと言います。(マタハラ禁止の注意喚起を出した側からの、まさかのマタハラです!)この事案の困難時届には「出産・一時帰国後に本人が希望する場合は技能実習を再開する予定」と予め書いてあったにもかかわらず!
そこで、法務省(入国在留管理庁)と厚労省(技能実習業務指導室)とZoom会合を持ち、阿部とも子は実習生の支援者らと共に、それはおかしいではないか!と問いかけ、判断の是正にこぎつけました。
なお、実習再開に向けては、雇用者側からの新たな技能実習計画、説明書、誓約書の提出が求められることとなりました。「それでは雇用側への負担が増えてしまい、女性への圧力(マタハラ)につながりかねない。今後は、出産後の実習再開には、『再開届け』1枚で済むような手続の簡素化を考えてください」と阿部とも子と実習生支援者は強く求めました。
この数年で、多くの人々からの働きかけの結果、多言語でパンフレットもできました。
■妊娠中の技能実習生のみなさんへ
https://www.moj.go.jp/isa/content/001349022.pdf
(日本語、ベトナム語、中国語、インドネシア語、タガログ語、英語、タイ語、カンボジア語、ミャンマー語)
■監理団体・実習実施者さま向けリーフレット
https://www.moj.go.jp/isa/content/001349019.pdf
外国人技能実習生を単なる「労働力」ではなく、「生活者」として共生する社会を目指したいものです。
■関連国会質問はこちら
第198回国会 厚生労働委員会 第2号(平成31年3月12日)