2024/07/12

【質問主意書・答弁】人事院勧告と令和六年度診療報酬改定による賃上げに関する質問主意書

6月18日に提出した、「人事院勧告と令和六年度診療報酬改定による賃上げに関する質問主意書」の答弁が同28日に来ました。

衆議院HPでも見られますので、ぜひご注目ください。

令和六年六月十八日提出
質問第一七八号
 

人事院勧告と令和六年度診療報酬改定による賃上げに関する質問主意書

提出者  阿部知子

人事院勧告と令和六年度診療報酬改定による賃上げに関する質問主意書

 岸田文雄首相は今国会の施政方針演説で「経済再生が岸田政権の最大の使命だ」と強調し、「「賃金が上がることが当たり前だ」という前向きな意識を社会全体に定着させる」旨を公言した。また、経済界や労働団体の代表者と意見交換する政労使会議で、二〇二四年春季労使交渉(春闘)に関して「昨年を上回る水準の賃上げ」を求めた。
 こうした政府方針と連動し、令和六年度の診療報酬改定では、医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取組として特例的な対応が行われ、初・再診時と訪問診察時について「外来・在宅ベースアップ評価料」・「歯科外来・在宅ベースアップ評価料」、入院時に「入院ベースアップ評価料」、訪問看護利用時に「訪問看護ベースアップ評価料」が上乗せされた。
 毎年出される人事院勧告は、公務員の給与水準を民間企業の従業員と均衡させることが目的であり、自治体病院の職員の給与は人事院勧告に沿って毎年決まる。一方、今回の診療報酬改定の特例的な対応は病院、医科診療所等で働く特定職種の職員の賃上げのためのものである。
 この間、自治体病院は新型コロナウイルス対応に尽力してきた。しかし、患者数がコロナ禍以前に戻らず、新型コロナウイルス対応の病床確保料等も終了し、現下の物価高騰も加わって「「賃金が上がることが当たり前だ」という前向きな意識」の醸成は難しく、「ベースアップ評価料」の算定に躊躇する自治体病院が見受けられる。その理由として、「ベースアップ評価料」の算定は特例的な対応で今後継続するかどうかわからないこと、人事院勧告(人事委員会勧告)と令和六年度診療報酬改定による賃上げの関係性が整理されていないことなどが考えられる。
 以上を踏まえ、以下、質問する。

一 ベースアップ評価料について
 1 初・再診時と訪問診察時について「外来・在宅ベースアップ評価料」・「歯科外来・在宅ベースアップ評価料」、入院時に「入院ベースアップ評価料」、訪問看護利用時に「訪問看護ベースアップ評価料」と範囲を特定し、対象を「主として医療に従事する職員」と限定した理由は何か。

一の1について
 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、令和五年十一月二十一日の衆議院予算委員会において、武見厚生労働大臣が「今年の春闘などを通じた各産業で賃上げが行われている中で、医療・・・では賃上げがほかの産業に追いついていかない・・・リハビリテーションなどを担う医療関係職種・・・の賃金は、全産業平均を下回る水準で推移をしております」と答弁しており、また、同年十二月二十日に財務大臣と厚生労働大臣の間で合意した令和六年度「診療報酬改定について」において「看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種・・・について・・・特例的な対応」を行うとされたところ、当該医療関係職種を始め医療に従事する職員について、賃上げについて初診料、再診料等の基本診療料等での対応を行う職員等を除き、御指摘の「ベースアップ評価料」の対象としたものである。


 2 診療報酬表とは別に「ベースアップ評価料」を持ち込むことは、医療機関間に人件費上の新たな格差をつくりかねない。また、算定は非常に複雑な計算式を用いるため医療機関の負担が大きい。さらに患者の窓口負担にも新たな格差が生じる。人件費の原資は、初・再診時や訪問診療科、入院基本料等の基本診療科の引上げで行うべきではないか。

一の2について
 お尋ねについては、職員の賃上げを着実に図るため、保険医療機関において、当該職員の賃上げのために算定する診療報酬を当該職員の賃上げに用いなければならないこととした上で、賃上げのための計画書の作成等を求めることが必要であると考え、その算定に当たってこれらを要件として定めることがなじまない初診料、再診料等の基本診療料等での対応ではなく、御指摘の「ベースアップ評価料」での対応を行ったところである。


二 自治体病院の診療報酬による賃上げについて
 自治労の調査によると六月からベースアップ評価料を算定していない自治体病院(県立病院含む)が約二十四%(回答のあった二百四十七医療機関中五十九医療機関)ある。
 また、同調査で、ベースアップ評価料を算定した自治体病院の約八十三%が、まだ具体的な賃上げ方法や額を明確にしていない。厚生労働省保険局医療課より令和六年三月二十八日に発出された二〇二四年診療報酬改定に関する疑義解釈資料(その1)の別添2の、看護職員処遇改善評価料及びベースアップ評価料関係の共通事項の問1「ベースアップ評価料による収入について、人事院勧告に伴う給与の増加分に用いてよいか」の回答は「差し支えない」である。この回答により自治体病院の多くが、ベースアップ評価料による増収を人事院勧告にもとづく給与引上げの原資に充てようとしている。
 1 人事院勧告に伴う給与の増加分に用いて「差し支えない」とした理由は何か。
 2 国の方針に沿って自治体病院が賃上げを確実に実施していくためには、人事院勧告に沿った給与の引上げと診療報酬による賃上げの関係の整理が必要である。どのように整理しているのか。総務省、厚生労働省の両省からガイドラインや具体的な方法などを示す予定はあるか。

二について
 人事院勧は、民間企業従業員と一般職の国家公務員の給与水準を均衡させることを基本として行われるものであるところ、御指摘の「ベースアップ評価料」は、医療関係職種の賃金水準について他産業のそれとの比較も行いながら賃上げを図るために新設されたものであり、これらの趣旨は重なると考えられることから、「疑義解釈資料の送付について(その一)」(令和六年三月二十八日付け厚生労働省保険局医療課事務連絡)において、「ベースアップ評価料による収入について、人事院勧告に伴う給与の増加分に用い」ることは、「差し支えない」とするとともに、「疑義解釈資料の送付について(その九)」(令和六年六月二十日付け厚生労働省保険局医療課事務連絡)において、「自治体病院の職員の給与については、関係法令に定める均衡の原則等の給与決定原則に基づき、人事委員会勧告等を踏まえ、各地方公共団体において適切に対応することとなる」としているところであり、こうした取扱いについて、引き続き、必要な周知を行ってまいりたい。


三 国立病院機構の診療報酬による賃上げについて、以下の三点につき、政府の把握しているところを示されたい。
 1 国立病院機構はベースアップ評価料を算定しているのか。
 2 算定していない場合は、その理由は何か。
 3 算定している場合は、診療報酬による賃上げは基本給の見直しまたは月額手当どちらで改善を行っているのか。

三について
 お尋ねの「国立病院機構の診療報酬による賃上げ」については、独立行政法人国立病院機構の全ての病院において、令和六年四月に御指摘の「基本給の見直し」を行い、同年六月から御指摘の「ベースアップ評価料」を算定するため、必要な届出を行ったところであると承知している。


四 病院事務職員、給食調理員の賃上げについて
 1 病院事務職員は病院運営に重要な役割を果たしている。また病院食は治療の一環でもありその調理をする給食調理員は医療提供をサポートしている。ともにベースアップ評価料の対象とするべきであると考えるが、外している理由は何か。
 2 病院事務職員の診療報酬による賃上げは初・再診料及び入院基本料の引上げ財源によって賃上げを行うとされているが、その場合は給食調理員も含まれると考えるがどうか。

四について
 御指摘の「病院事務職員」及び「給食調理員」については、派遣や事務委託等の形態で勤務する者が少なからずおり、その勤務形態は多様であるため、保険医療機関において、これらの職員の賃上げについて、より柔軟な対応が可能となるよう、初診料、再診料等の基本診療料等の引上げを行ったところである。