2019/12/27

12月5日に「1F汚染水に関するヒアリングおよび意見交換会」を開催しました。

12月5日に「1F汚染水に関するヒアリングおよび意見交換会」を開催しました。

■対応者は次の通り、
【経産省】電力・ガス事業部 原子力発電所事故収束対応室 
           対策官 奥田修司 氏ほか
【東京電力】廃炉推進カンパニー 八木秀樹 氏ほか
【原子力規制庁】東京電力福島第一原子力発電事故対策室 
          管理官補佐 林田英明 氏ほか

■説明を求めた事項は
経産省の「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」第15回2019年11月27日資料
・資料3 ALPS処理水の放出による放射線の影響について(経産省)
・資料4 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 これまでの議論の整理 (経産省)
・資料5 多核種除去設備等処理水の貯蔵・処分の時間軸(東電)
その他の質問項目です。(次第はこちら

福島第一原発の放出管理目標値を超える想定・・・
 東電の想定では、廃炉30年~40年で完了すると仮定すれば、2020年処分開始の場合は1年あたり39~27兆ベクレル、2025年処分開始の場合は51~32兆ベクレル、2030年処分開始の場合は68~37兆ベクレル、2035年処分開始の場合は106~43兆ベクレルを処分することとなり、福島第一原発のこれまでの放出管理目標値は年間22兆ベクレルですので、いずれも超過してしまいます。

 そこで阿部知子が22兆ベクレルの根拠を尋ねたところ、規制庁の林田氏は、「歴史的には1972年、昭和47年に当時の原子力委員会が、我が国の原子力安全上の通常運転時に放出される放射性物質について、どのようにモニタリングしていくかについて、環境安全専門部会が設置され(略)、その後、1974年、昭和49年環境安全専門部会、環境放射能分科会が、米国でのトリチウム放出の実績を踏まえて、同じ沸騰水型BWRの放出実績を踏まえて、我が国の管理目標をとりまとめています。当時とりまとめたのが、我が国では3.7兆ベクレルというのが1基あたりですね。管理していく努力目標として定められています。6基ございましたので、3.7兆ベクレル×6で22兆ベクレルです」と回答。
 
 事後的にこの決定文書を求めると、諮問や決定文書は確認できず、当時の報告書は、原子力委員会のウェブサイト(*)にあるといいます。

(*)「環境・安全専門部会(環境放射能分科会)(昭和49年7月)」の報告書
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V19/N11/197419V19N11.html

「廃炉」の定義は「地元の皆様をはじめとする関係者とご相談」
  ヒアリングの結果、経産省は、廃炉完了の年限を30年~40年と区切ることにこだわっていることが明らかとなりました。
 そこで阿部知子が「廃炉」の定義を尋ねると、東電の八木氏は「廃炉作業は福島第一原子力発電所の廃炉措置に関する中長期ロードマップがございます。これに基づいて、汚染水対策であるとか、使用済み燃料の取り出し、デブリの取り出し、廃棄物対策といったことを現在進めているところ。福島第一原子力発電所の廃炉の姿につきましては、いつまでにどこまでどんな状態にしていくかは、地元の方々をはじめ、関係する皆様に相談させていただきながら、検討を進めていくことになると、我々考えております。地元の皆様の思いを受け止めながら、着実に一つ一つ、廃炉の作業を進めてまいります」との回答。
 より明確な定義を尋ねても、「現段階で我々の方でお話させていただけるのは、廃炉の最終的な姿は、地元の皆様をはじめとする関係者の皆様とご相談させていただきながら、検討を進めてまいることと考えております」との回答に留まりました。
 廃炉完了を30~40年しながらも、肝心の「廃炉」の定義はないも同然であることが分かりました。

廃炉までに汚染水の処分を終えなければならない根拠は?
  それならば「廃炉」までにタンクの処分を完了しようと経産省が考えるのはなぜでしょうか。
 「廃炉(廃止措置)の終了までにALPS処理水の処分を終える必要があるのはなぜか」を阿部知子が求めたところ、経産省は、事後的に「原子炉等規制法第四十三条の三の三十三」を根拠として、回答を寄せてきました。
 しかし、その条文は福島第一原発のようにメルトダウンした事故炉を対象とした廃炉について言及しているものではありません。廃炉の定義がない中で、なぜ、汚染水の処理だけを急ぐのかはまったく明らかになりませんでした。

 今回はヒアリングの時間が十分に確保できなかったため、あらかじめ準備した以下のような問いに対する回答を得ることができませんでした。年明けに再度、ヒアリングの続きを行いたいと阿部知子は考えています。

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4.小委員会の目的は風評被害を抑えるための検討をすることである(2016年11月11日第1回資料1 小委員会規約)。エネ庁や東電はタンクに貯め続けることが風評被害になると説明するが、なぜ放出すると風評被害が収まるのか。(エネ庁、東電)
・小委員会の委員からは、海洋放出をすれば間違いなく風評被害が拡大するという意見、風評被害を抑えるためには、長期貯蔵が必要、時間が解決することがあるという意見が出ている。しかし、放出を主張するエネ庁や委員らからは、放出による風評被害の拡大を抑える方策は出てない。
・風評被害を抑える方策があるのに、それがまったくない放出の方向で議論を進めるというのは、論理性、合理性に欠けるのではないか。

5.全漁連、県漁連が全面的に反対している中、放出をすることは適切な処理なのか。(エネ庁、東電)
・県漁連、全漁連に放出についての意思確認をしているか。
・漁連はどう答えているか。
・委員会では地元の理解が言及されているが、「地元だけでいいのか」「地元の意思確認はしたのか」「地元とはどの範囲か」。

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