2020/07/03

(独)国立病院機構八雲病院の機能移転に関する質問主意書への答弁が閣議決定されました。

コロナ禍のただ中で、筋ジストロフィーや重症心身障害児(者)の入院施設の機能移転計画が強行されようとしています。免疫力が低く感染リスクが極めて高い患者さんたちであり、この時期の移送が生命にかかわる危険が十分に予想されることから、延期を求めて質問主意書を提出しました。しかし、厚労省と国立病院機構は予定を変えるつもりはなく、9月1日から予定通り実行するという答弁書が来ました。

 

令和二年六月十二日提出

質問第二六五号

 

独立行政法人国立病院機構八雲病院の機能移転に関する質問主意書

答弁書(6月25日)

 

国立八雲病院の、函館病院、北海道医療センター、帯広病院への機能移転が本年九月一日と決定され、それに伴う患者移送計画の実施時期が八月中旬と示されたことについて、五月十三日の厚生労働委員会において、新型コロナウイルス感染症収束時までの延期を提案したところ、国立病院機構楠岡理事長は「御指摘のとおり、八雲病院の機能移転に当たりましては、患者の安全、安心を確保することが極めて重要と認識しており、今後、患者を受け入れる北海道医療センター等においても、新型コロナウイルス感染症に対するものを含めた院内感染対策について万全を期した上で機能移転の準備を進めていきたい~中略~次回予定している説明会の中で、その時点の状況に応じた感染対策についても説明を行っていきたい」と答弁を行った。これを踏まえ、政府の姿勢について以下質問する。

 

一 「コロナ以前」である令和元年十一月に示された「八雲病院の機能移転に係る患者移送基本計画」基本方針(1)では、「患者・ご家族の安全・安心を最優先とする」とされている。しかし、コロナ禍の只中にある現在、この基本方針自体が成り立たない。輸送の対象である患者は、筋ジストロフィーや重症心身障害児(者)という、免疫力が低く感染リスクが極めて高い患者であり、この時期の移送が生命にかかわる危険が十分に予想されることから、「安全・安心を最優先とする」なら延期以外に選択肢はない。国立病院機構がこの時期に強行しようとしていることについて、所管省庁である厚労省の見解を伺いたい。

  

独立行政法人国立病院機構(以下「機構」という。)においては、機構八雲病院の機能の移転に当たって、患者及びその家族等に対する感染症対策を含めた安全対策及び丁寧な説明を徹底することとしており、今後、関係者と協議しつつ、御指摘の「八雲病院の機能移転に係る患者移送基本計画」の更なる具体化に向けた検討を行うものと承知している。厚生労働省においては、こうした機構の取組を促すなど、機構に対し適切な対応を求めてまいりたい。

 

二 楠岡理事長は「その時点の状況に応じた感染対策についても説明を行っていきたい」と答弁しているが、患者・家族の不安の声に対し、機構は、職員はおろか、患者・家族への説明会すら開催しておらず、ようやく六月九日に職場長各位に発出した「機能移転に係る患者移送リハーサルの実施及びリハーサル説明会の開催について」において、移送までのスケジュールが改めて示されたところであるが、患者の移送体制についての内容は、令和元年十一月二十六日に出された「八雲病院の機能移転に係る患者移送基本計画」の内容のまま、現在まで何ら具体的に示されていない。しかし、繰り返すが当時と現在では状況が全く違っている。移送に関連するハード、ソフトに関するすべての感染対策についての具体的な計画を、一刻も早く示すべきと考えるが、所管省庁である厚労省の見解を問う。

 

機構においては、機構八雲病院の機能の移転に当たって、患者及びその家族等に対する感染症対策を含めた安全対策及び丁寧な説明を徹底することとしており、今後、関係者と協議しつつ、御指摘の「八雲病院の機能移転に係る患者移送基本計画」の更なる具体化に向けた検討を行うものと承知している。厚生労働省においては、こうした機構の取組を促すなど、機構に対し適切な対応を求めてまいりたい。

 

三 機能移転先である北海道医療センター、函館病院も新型コロナウイルス感染患者を受け入れており、免疫力が低く感染リスクが高い患者を集団で移送することにより新たな院内感染を招きかねない。東京都の永寿総合病院で起きた集団感染も、死亡者四十二名のうち、二十二名が、免疫力の低下した血液内科の患者だったという。

患者に対するPCR検査を定期的に行う必要性について、所管省庁である厚労省はどのように認識しているのか。

 

機構においては、一、二及び六についてで述べたとおりの安全対策を徹底するとともに、お尋ねの「患者に対するPCR検査」及び「スタッフに対する事前のPCR検査」の実施について、その対象者も含めて検討しているものと承知している。厚生労働省においては、御指摘の「院内感染」等が生じることがないよう、機構に対し適切な対応を求めてまいりたい。

 

四 一方で、無症候感染者の存在が明らかになっている以上、万が一にも移転後の院内感染が発生した場合の対策を考慮しておく必要があるが、移転先の北海道医療センターに新築整備された筋ジストロフィー病棟および重症心身障害児者病棟には、陰圧室もなく完全隔離ができる病室もない。ゾーニングで区画をつくっても、患者感染が起きた場合には感染拡大を防ぐことが困難である。院内クラスターが発生した北海道がんセンターの事例を教訓に、どのような対策をとるべきかについて、所管省庁である厚労省の見解を示されたい。

 

お尋ねについては、国立感染症研究所等が新型コロナウイルス感染症に関する医療機関内の感染防止策等を取りまとめた「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理」(以下「感染管理」という。)において、「呼吸器症状のある患者の診察時にはサージカルマスクを着用し、手指衛生を遵守する」、「上気道炎やウイルス感染症を疑う症状を呈した入院患者」については「病室外への移動は医学的に必要な場合に限定する」等とされており、厚生労働省においては、感染管理について、事務連絡の発出、ホームページでの公表等の様々な手段により、随時、地方公共団体や医療機関に対して周知を行ってきたところであり、さらに、院内感染事例の増加を踏まえて、これまでの事例から感染拡大のパターンを分析し、分かりやすくポスターにまとめて注意喚起を行っているところである。

これらに基づき、機構八雲病院の機能の移転が適切に実施されるよう、同省においては、機構に対し適切な対応を求めてまいりたい。

 

五 移送手段は福祉車両及び民間救急車(重症者)による陸路移送とのことである。函館病院までは片道約二時間、札幌の北海道医療センターまで片道約四時間(休憩除く)、帯広病院まで片道約五時間(休憩除く)という。移送スタッフは機構内の北海道・東北管内施設から協力を得ると聞くが、長時間にわたり車内でいわゆる三密状態を強いられることから、スタッフに対する事前のPCR検査は不可欠であると考えるが所管省庁としての厚労省の認識を伺いたい。

 

機構においては、一、二及び六についてで述べたとおりの安全対策を徹底するとともに、お尋ねの「患者に対するPCR検査」及び「スタッフに対する事前のPCR検査」の実施について、その対象者も含めて検討しているものと承知している。厚生労働省においては、御指摘の「院内感染」等が生じることがないよう、機構に対し適切な対応を求めてまいりたい。

 

六 移送のリハーサルを、六月二十三日(八雲から函館)、二十四日(八雲から北海道医療センター)に行うとのことだが、患者は当然ながら参加できないため、スタッフのみで行うと考えられ、あくまで仮定や想定の下に実施される予行演習に過ぎない。当日は万が一にも事故があってはならず、常に緊張を強いられる大変な業務である。スタッフが安心して遂行するためには、十二分な人数の配置と事前教育・訓練、不測の事態に備えた受け入れ病院の確保、必要な防護具等について、万端怠りなく準備の上で実施すべきであり、こうした感染予防策が徹底されるまでは、機能移転計画を実行すべきではない。

八月の患者移送計画は、新型コロナウイルス感染症が収束するまで延期するべきと考えるが、所管省庁である厚労省の見解を問う。

 

機構においては、機構八雲病院の機能の移転に当たって、患者及びその家族等に対する感染症対策を含めた安全対策及び丁寧な説明を徹底することとしており、今後、関係者と協議しつつ、御指摘の「八雲病院の機能移転に係る患者移送基本計画」の更なる具体化に向けた検討を行うものと承知している。厚生労働省においては、こうした機構の取組を促すなど、機構に対し適切な対応を求めてまいりたい。