昨今問題が多く指摘されている、「マイナ保険証」について、6月16日に質問主意書を提出。同30日に答弁がきました。
衆議院HPからも見れますので、ぜひご注目ください!
令和五年六月十六日提出
質問第一二六号
内閣衆質二一一第一二六号
令和五年六月三十日
内閣総理大臣 岸田文雄
令和五年六月二日、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案」(閣法四十六号)が成立した。
日本の社会保障制度は、憲法第二十五条生存権(健康で文化的な最低限度の生活を営む権利)のもとで形成されてきた。健康保険は各職域の保険が先行し、昭和三十三年に国民健康保険法が制定され、同三十六年から、すべての人が公的な医療保険に加入する国民皆保険制度が始まった。これにより、病気やけがをしても、誰もが安心して医療機関に行くことができるようになった。
国民にとって、健康保険証は受診の資格を証明する必須のものである。健康保険法、国民健康法の施行規則は、各保険者に被保険者(世帯主)に対する健康保険証の交付を義務付けている。また、健康保険証は各々の健康保険者が発行し国が発行しているものではない。
一方、国民健康保険(市町村国保)は、保険料の納付状況に応じて「短期被保険者証」「被保険者資格証明書」を交付する場合がある。保険者が明らかになることで生活保護制度等につながる場合もある。
ところが、本法は、国が健康保険証の廃止を一方的に宣言し、マイナ保険証に一本化させることを前提として立法されている。条文に「健康保険証の廃止」の記述はない。新たに「資格確認書」がつくられ、「マイナンバーカードを紛失した・更新中の者」「介護が必要な高齢者やこどもなどマイナンバーカードを取得していない者」等については対応するとしている。しかし、現実には、マイナンバーカードが取得できない者、あるいは取得したくない者がいる。そもそもマイナンバーカードの取得は強制ではなく、任意である。
以下、質問する。
一 「健康保険証の廃止」について
1 「健康保険証の廃止」は、政府、国会のどこで議論されたのか。
2 「健康保険証の廃止」の決定はどこで、どのような手続きで行われたのか。
3 国民、医療機関、各保険者の合意形成が図られているのか。
4 「健康保険証の廃止」は、法律上どのように担保されているのか。
一の1及び2について
個人番号カード(以下「カード」という。)と健康保険証の一体化については、患者は本人の健康や医療に関するデータに基づいたより適切な医療を受けることが可能となるなど、様々なメリットがあり、政府を挙げてカードの普及や利便性の向上に取り組む中、このようなメリットが早期に広く享受されるよう、デジタル庁、総務省及び厚生労働省における協議を経て、令和六年秋に健康保険証を廃止することとし、「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」(令和四年十月二十八日閣議決定)において、カードと健康保険証の一体化を加速し、令和六年秋に健康保険証の廃止を目指すための環境整備を行う旨を明記した。その後、第二百十一回国会において、健康保険証の廃止等を内容とする国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)等の改正を含む行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律(令和五年法律第四十八号。以下「改正法」という。)が、令和五年六月二日に成立し、同月九日に公布されたところである。
一の3について
お尋ねの「国民、医療機関、各保険者の合意形成」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「健康保険証の廃止」については、社会保障審議会医療保険部会や「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会」(以下「検討会」という。)において、御指摘の「医療機関」や「各保険者」も含めて、広く国民の声を踏まえた検討を行い、その検討を踏まえ、令和六年秋に向けて円滑に移行できるよう環境整備を進めているところであり、国民の理解が更に得られるよう、これからも丁寧に説明する努力を続けてまいりたい。
一の4について
お尋ねの「法律上どのように担保されているのか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、改正法では、国民健康保険法及び高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)において、被保険者証の交付の求め等に関する規定を削除する等の措置を講じている。なお、改正法の施行に伴い、被保険者に対し被保険者証を交付する旨を定める健康保険法施行規則(大正十五年内務省令第三十六号)第四十七条等の規定について削除することとしている。
二 マイナンバーカードが取得できない者、取得したくない者について
高齢、障害等で、自署ができない、移動ができない、意思が確認できない、障害が原因で規定の証明写真から外れる等々の理由で申請ができない人がいる。総務省は、代理交付、出張申請受付等で申請が可能であるとするが、様ざまな理由で申請・取得ができない人が生じている。また、なりすまし、特殊詐欺などの問題も懸念される。
1 政府は、マイナンバーカードが取得できない事案をどのように把握し、その各々に対して、どこでどのように解決しているのか。
2 マイナンバーカードは任意である。「健康保険証の廃止」は、マイナンバーカードの強制に等しく、マイナンバーカードを取得したくないという者の「内心の自由」(憲法第十九条)を侵すのではないか。
3 「健康保険証の廃止」によって被る不利益をどう認識しているのか。
二の1について
カードの取得に関する課題については、検討会において関係団体から意見を聴取し、検討会における令和五年二月十七日の「中間とりまとめ」を踏まえ、カードの交付申請者の代理人に対する交付の活用ができるケースの拡充・明確化を行うとともに、介護施設等に市町村の職員が出張し、カードの交付申請を受け付けるなどの取組を推進することにより、カードを取得しやすい環境を整備することとしている。
二の2について
行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第十七条第一項において、カードは申請に基づいて交付されるものと規定されており、カードと健康保険証の一体化に際してもこの点を変更するものではなく、「マイナンバーカードを取得したくないという者の「内心の自由」(憲法第十九条)を侵す」との御指摘は当たらないと考えている。なお、改正法では、健康保険法(大正十一年法律第七十号)等の医療保険各法において、オンライン資格確認を受けることができない状況にある方について、本人の申請に基づき交付される資格確認書により、保険医療機関及び保険薬局(以下「保険医療機関等」という。)において被保険者の資格を確認するための規定を設けている。
二の3について
御指摘の「「健康保険証の廃止」によって被る不利益」の意味するところが必ずしも明らかではないため、一概にお答えすることは困難であるが、改正法では、御指摘の「マイナンバーカードが取得できない者、取得したくない者」も含め、オンライン資格確認を受けることができない状況にある方については、本人の申請に基づき交付される資格確認書により、保険医療機関等において被保険者の資格を確認するための措置を講じることとしており、健康保険証の廃止後、カードが取得できないこと等により被保険者が必要な保険給付を受けられないといったことがないよう、必要な対応を行ってまいりたい。
三 個人情報の保護について
現在、オンライン資格確認システムには、特定健診等の情報、薬剤情報、診療情報等が登録されているが、これらは、極めてプライバシー性の高い個人情報である。
また、医療機関等は、資格確認と併せて、本人の同意の下で、特定健診等の情報や薬剤情報が閲覧できることになっているが、個人情報の保護の観点から懸念が多い。
1 オンライン資格確認システムに登録される情報の選定、範囲は、どこでどのように決定されるのか。登録される情報は個人のものである。その決定について国民の合意を得る必要があるのではないか。
2 マイナ保険証の手続きをする際に、登録されている情報や医療機関等が閲覧できることを国民に説明し、その逐一に合意を得ているのか。
3 マイナ保険証の資格確認する際、医療機関等は受診する患者に、登録されている情報を閲覧することを、どのように説明し合意を得ているのか。
三の1について
医療保険者は、健康保険法等に基づく保健事業等の一環として、被保険者等のレセプトから抽出された薬剤や診療に関する情報、特定健康診査等に係る情報等(以下「薬剤情報等」という。)を保有しており、健康保険法第二百五条の四等の規定に基づき、保健事業等の実施のために薬剤情報等の提供等の事務を社会保険診療報酬支払基金等(以下「支払基金等」という。)に委託することができることとされているところ、オンライン資格確認等システムにおいて登録する薬剤情報等の具体的な範囲については、医療保険者の代表、被保険者の代表等を構成員とする社会保障審議会医療保険部会等における議論を踏まえ、医療保険者と支払基金等との間で定められているところである。
三の2及び3について
カードを健康保険証として利用するための登録(以下「利用登録」という。)を行うことにより、患者の同意に基づき保険医療機関等がオンライン資格確認等システムを利用して当該患者の薬剤情報等を閲覧することが可能となる旨について、利用登録に関する案内を含め、様々な場面で周知・広報を行っている。また、保険医療機関等が同システムを利用して患者の薬剤情報等を閲覧するに当たっては、当該保険医療機関等において患者がオンライン資格確認を受ける際、当該保険医療機関等の窓口に設置する「顔認証付きカードリーダー」の画面において、個別に当該患者の同意を取得している。
以上