2023/12/28

【質問主意書・答弁】社会福祉の基幹事業というべき障害者相談支援事業の見直しに関する質問主意書

12月7日提出「社会福祉の基幹事業というべき障害者相談支援事業の見直しに関する質問主意書」の答弁が、同19日にきました。

市町村から委託を受けて社会福祉法人などが行っている地域の相談支援事業は、基本相談以外にも虐待防止や権利擁護も担う、地域になくてはならない重要な総合支援の窓口であり、実態は社会福祉事業に該当します。しかし、法的に社会福祉事業に位置づけられていないため、自治体からの委託料が消費税の課税対象となり、運営を圧迫している現状について、社会福祉法の見直しを求めました。

 

衆議院HPからも閲覧可能です。

令和五年十二月七日提出
質問第一一六号

 

社会福祉の基幹事業というべき障害者相談支援事業の見直しに関する質問主意書

提出者  阿部知子

 


 二〇〇〇年に障害者福祉サービスが措置制度から契約制度に移行し、これに伴い利用者が選択できる仕組みとなったとされている。利用者が選択するためには情報提供を含めて、利用者や家族が相談できる仕組みが不可欠であり、そのための中心的な福祉事業として市区町村相談支援事業が制度化されたと理解している。
 そのような経過を踏まえて制度化された相談支援事業は、専門性をもった職員を配置し、利用者のあらゆる相談を支援する、まさに社会福祉の基幹事業と考える。これを踏まえて以下、質問する。

一 いわゆる障害者総合支援法第七十七条に基づく相談支援事業は、二〇〇六年度から全市町村に義務付けられた。実施主体である市町村の多くは社会福祉法人などの民間事業者に業務委託しているが、社会福祉事業に位置づけられていないため、委託料は消費税の課税対象とされている。しかし、一部の自治体は、非課税と定められている社会福祉事業に該当するか、これに準ずる事業とみなし、非課税としていたという(自治体半数超非課税と誤認:中日新聞二〇二三年七月二日)。
 一方、障害者総合支援法第五条に基づく一般相談支援事業と特定相談支援事業はいずれも社会福祉事業に位置づけられており非課税である。相談支援事業が社会福祉事業に位置づけられない根拠は何か。

 

一について 

お尋ねについて、社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二条に規定する社会福祉事業に位置付けるかどうかは、平成十年十一月十七日に開催された「第十五回中央社会福祉審議会社会福祉構造改革分科会」等の資料において、公的な助成を通じた普及や育成が必要な事業であることや、サービスの質の確保のための公的な規制が必要な事業であること等の要素を総合的に勘案して判断する旨示されているところ、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第七 十七条第一項第三号に掲げる事業(以下「相談支援事業」という。)については、同項に基づき市町村が行うものとされ、市町村において、地域の実情に応じ、適切な形で整備が進められるべき事業であるため、これらの要素等を総合的に勘案の上、必ずしも社会福祉事業の性格になじまないものとし、社会福祉事業として位置付けていないものと認識している。


二 相談支援事業(基幹相談支援センター事業)と同様に機能している高齢者の総合相談の窓口である「地域包括支援センター」への委託料は非課税扱いである。一方は課税、一方は非課税という、こうした制度間の不均衡についてはどのように認識しているか。

 

二について

御質問の趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「地域包括支援センター」は介護保険法(平成九 年法律第百二十三号)第百十五条の四十六第一項に規定する包括的支援事業(以下単に「包括的支援事 業」という。)を実施する施設を指すものと理解し、また、お尋ねが、相談支援事業に係る消費税法(昭和六十三年法律第百八号)における課税の取扱いと、包括的支援事業に係る当該取扱いとが異なることへの認識についての御質問であるとすれば、包括的支援事業については、平成十七年の介護保険法の改正において創設され、同法第百十五条の四十七の規定により、市町村は老人福祉法(昭和三十八年法律第百三 十三号)第二十条の七の二に規定する老人介護支援センターの設置者その他の厚生労働省令で定める者に 対し、包括的支援事業の実施を委託することができることとされたところ、消費税については、当該老人 介護支援センターの設置者が委託を受けて従来から社会福祉事業である老人介護支援センターを経営する 事業の一環として包括的支援事業を行う場合は、社会福祉事業が行われるものとして非課税となり、また、このことも踏まえ、当該老人介護支援センターの設置者以外の者が委託を受けて包括的支援事業を行う場合においても、社会福祉事業が行われるものに類するものとして非課税とされたものである。他方、相談支援事業については、同様の状況にあったものではなく、課税の取扱いが異なっているものと認識している。


三 委託の相談支援事業(基幹相談支援センター事業)は、本来行政が担うべき役割を委託しているものであり、市町村が直営で行っている自治体もある。基本相談以外にも虐待防止や権利擁護も担う、地域になくてはならない重要な総合支援の窓口であり、その事業の役割や機能から、実態として明らかに社会福祉事業と言える。まずはこうした実態調査を全国の自治体に対して早急に行った上で、明確に社会福祉事業に位置づける等、現状に即した制度に見直す必要があると考えるがどうか。

 

三について

相談支援事業については、一についてで述べた考え方により、社会福祉事業として位置付けていないものであり、御指摘の「実態調査」を実施することや、相談支援事業を「社会福祉事業に位置づける等」の「制度に見直す」ことは考えていない。
 

四 前出の中日新聞の報道を受け、鈴木俊一財務相は七月四日の閣議後会見で、この相談支援事業について、「社会福祉法上の社会福祉事業に該当せず、消費税の課税対象」とし、厚生労働省と連携して課税対象だと周知する方針を表明した。十月四日にはこども家庭庁、厚生労働省連名でこの発言を追認する事務連絡が発出されている。さらに国税庁は過去に遡って消費税、追徴税の徴収の方針と聞く。しかし、そもそも国の制度について、自治体への説明・連絡の不徹底が誤認を招いているという前提があり、自治体は限られた財源の中で苦慮しながら実態に即した運用をしているのであるから、実態調査の間、当面は政省令などで非課税と明記すべきと考えるがどうか。
 

四について

三についてで述べたとおり、御指摘の「実態調査」を実施することは考えておらず、お尋ねについてお答えすることは困難である。 なお、相談支援事業に係る消費税法における課税の取扱いについては、これまで十分に周知されていなかったことから、市町村において、当該取扱いについて誤解が生じていたものと認識している。このため、「障害者相談支援事業等に係る社会福祉法上の取扱い等について」(令和五年十月四日付けこども家 庭庁支援局障害児支援課並びに厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課及び精神・障害保健課 連名事務連絡)において、「障害者総合支援法第七十七条第一項第三号を根拠として市町村が行う障害者 4 相談支援事業については、・・・社会福祉事業には該当」せず、かつ、「消費税関係法令上、他に非課税 とする旨の規定もないことから、消費税の課税対象であること。また、自治体が当該事業を民間事業者に 委託する場合の委託料については、委託料に消費税相当額を加えた金額を受託者に支払う必要があること」を明確化し、周知したところである。 今後、全国会議等の機会を通じて、当該事務連絡を踏まえた適切な取扱いについて、都道府県及び市町 村に対し周知徹底してまいりたい。